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それはまだ確か六歳ごろの話。小学校に入学する直前、僕のばあちゃんは死んだ。
幼い頃から僕が見る不思議な出来事を信じ、唯一同じものを見ることが出来た人物だった。
例えば片足のない老人。首を紐でぶら下がったまま笑い続けるサラリーマン。交差点にいる血だらけの子供。どれもこれも、僕とばあちゃんにしか見えなかった。僕が怯えているとばあちゃんだけが励まして、そしていつも言った。見えないフリするんやで、って。
「ええか研一。お前は見えてしまう。これから先もその力が消えることはないだろう。とにかく見えないフリするんやで。幸い、お前は少しのものなら蹴散らす能力もある。多少のピンチは大丈夫だろうが、関わらないに越したことはないんや」
死ぬ前、ばあちゃんは僕に繰り返し繰り返しそう言った。そして病院で静かに息を引き取った。あとで聞いた話だけれど癌だったららしい。
幼かったけれど、僕は死というものがそれなりに理解できていた。ああいったものが見えるせいなのかもしれない。ばあちゃんはもういなくなって、自分とは違う世界に行ってしまったのだと泣き喚いた。
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