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ばあちゃんが言っていた蹴散らす能力、というのは、あの他の人には見えない奴ら相手に使うものだ。もしこっちが見えるということに気づかれ、懐かれてしまった場合。僕は『それ』に強く意識を集中させて睨みつける。そうすれば大抵のものはいなくなる。
だがこの方法はテレビでよく見るようなお祓いだとか除霊だとかたいそうなもんじゃない。一瞬ビビらせるだけ、というイメージだ。しかも僕自身はかなり疲れるし毎回上手くいくとも限らない。だから、とにかくまず奴らに関わらないようにするのが一番なのだ。
小学校、中学校、高校、大学生。とにかく平凡に暮らしてきた。視えるだなんて誰にも言ったことないし、平凡でどちらかと言えばちょっと陰キャラで静かに静かに過ごしてきた。
この生き方がこれから先もずっと続くんだと思っていた。
「今日から入った大山研一くんです」
そう紹介され、慌てて自分は頭を下げた。かけていた眼鏡が少しずれるのを直す。適当な拍手が鳴り響いた。
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