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「あの、すみませんが、少しだけ聞きたくて……最近こう、事件に巻き込まれたとか、心霊スポット行ったとか……ありませんか?」
俯きながら小声でごにょごにょと尋ねた。ここで気味悪がられる覚悟はできていた。出会って話もしてない男からこんなことを言われれば、普通ドン引きしてこれから無視されるコースで間違いないと思う。それでも見て見ぬフリはできなかった。
「……え」
「あ、ご、ごめんなさい気を悪くしたら……ちょっとこう、気になったというか」
「ええっと、大山くん、だっけ」
「あ、はい」
「このあと少し時間ある?」
思ってもみない発言に顔を上げた。そして後悔した、やっぱり真っ黒な顔が怖かったのだ。
「あ、はい、大丈夫ですけど」
「よかった。少し話してみたいな。どこかでご飯食べようよ。着替えてくるから待っててね」
星野さんはそう言い残すと、颯爽と更衣室の方へ向かって行ってしまった。ポカン、としてその場に立ち尽くす。引かれなかったな、意外にも……。
「大山、まじ?」
背後から声がかかる。振り返るとノックが目をまん丸にして近寄ってきた。彼は肩をすくめて言った。
「星野に話しかけるとか勇者じゃん」
「いや、ちょっと聞きたいことがあって……」
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