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アサリのパスタと、私の好きなキャラクターがプリントされたマグカップ付きのプリンを手に、レジへ向かう。
早く選べてよかった。
女性店員は、さきほどと変わらない笑顔で「こちらのレジへどうぞ」と言ってくれた。彼女がまたさり気なく、腕をさすったのが見えた。
「2点で合計785円です。こちらは温めますか?」
「いえ、大丈夫です」
応えながら、財布をあけた。重めの財布には、パッと見ただけでもぴったり支払える小銭がある。
「785円、ちょうどお預かりします」
私は財布をしまい、パーカーのポケットに突っ込んだ。手首から先だけでも温めたかった。
その時、先ほど拾った一円玉のボロボロの輪郭が、指の肉に食い込んだ。
どんな形をしているか、どんなにボロボロかはわかっているのに、もう一度とりだして眺めてしまう。
私はそれをレジ横の募金箱に入れた。
ボロボロの1円玉は、安っぽい音がして、動かなくなった。
「ご協力ありがとうございます」と女性店員がレジを操作しながら言い、レシートとレジ袋が手元にやってきた。
ポケットからしっとりと冷えた両手を出しそれらを受け取ると、急いで外へ出た。
背後で自動ドアが閉まる。
皮膚がじんわりと蒸されていき、赤信号を確認するころにはもう暑さを感じていた。
ちょっと良いことをした気分から、現実に引き戻された。
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