斎場の雷さま

妻からの依頼

　雷さまとの取引きで、私は学問の才を得た。
　私も雷さまと取引きをしたのだ。
　今のところ違反するようなことは起きていないが。
　万が一、違反してしまったとしても、友人が言うように、ヘソが取られたからといって困ることはない。風呂で少しだけ恥ずかしい思いをするくらいだろうか。
　断る理由などなかった。

　それからというもの、私は会社の昇級試験には合格し、資格試験にも落ちることはなかった。
　その甲斐があってか、縁があり、そして妻が出来た。

　結婚前のことだ。妻は何か思い詰めているようだった。

「何か不安があるの？」

「どうしてもお願いしたいことがあるの」

「何？」

「夫婦でもプライベートは大事にしましょう。私のスマートフォンは勝手に開けないでね」

「何だ、そんなことか。当たり前じゃないか」