三通目のメール

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三通目のメール

 ああ、僕は違反をしてしまった。    妻が結婚前に言っていたんだ。  自分のスマートフォンを勝手に見るようなことを決してしないように。  よくある話だろう。  やましい事がなくても見られたくない。夫婦だからといって、そのあたりのプライバシーは守ってほしいと。  しかし僕は約束を破った。  妻のスマホ画面に、知らない男からの通知が来ていたから。  誰だって、気になるだろう。君だって同じはずさ。  僕は妻のスマホを断りもなく開けてしまったんだ。  妻は普段、パスワードをかけているはずだった。それなのに。何故かその時には開いたんだ。開いてしまった。    聡明な君ならもう分かるだろう?  僕は違反したんだ。  雷さまは僕のヘソを取りに来た。  いや、もう取られている。  僕のヘソから、伸びているんだ。  ()が。    臍の緒だよ。  誰と繋がっているかって?  母でないことくらい、聡明な君ならもう分かるだろう。    僕はこれから雷さまの元に行く。  雷さまの子になるんだ。  嫌だ。  今、冷静にこの文を打っているように思うだろう?  そんな訳ないじゃないか。  指先が震えて仕方がないのに、それでもこの文を丁寧に綴れているのは、最期まで雷さまに愛されてしまったからだろうね。  僕の臍の緒を伝って何かがこっちに来ている。  嫌だ。行きたくない。助けてくれ。  ああ。もう駄目だ。  もう、すぐ、そこまで、かみなりさまが
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