第12話 呂号艦隊 出撃

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第12話 呂号艦隊 出撃

戦時日本の潜水艦と言えばイ(伊)号潜水艦を思い浮かべる人が多い。 イ号潜水艦は大型の潜水艦で太平洋を艦隊と行動を共にすることが 出来るように設計されている。 偵察機を格納できるタイプもあり、イ400型に至っては攻撃機を 3機格納できる大きさで内殻は何と双胴だった。 これに対して呂号潜水艦は行動範囲が近海を想定された小型の潜水艦 であり、地味な存在である。 大きさはドイツのUボートと同じくらいであった。 当時日本海軍では呂号潜水艦は補助艦艇的な位置づけで、輸送任務 などに使用された。 通常、潜水艦はドイツ海軍が行ったように通商破壊 (敵の軍艦ではなく、輸送船を攻撃目標とする) に使うのが最も効果的なのだが、日本海軍ではそういった発想は なかった。 日本海軍が所有する酸素魚雷の威力は現代日本でも知られており 硫黄島防衛の為、日本海軍に対して現代日本より潜水艦の支援依頼が あった。 これに答えて日本海軍より5隻の呂号潜水艦の支援があった。 アメリカ軍硫黄島派遣軍の艦隊が謎の攻撃を受けた翌日の夕刻、 上陸に備えて艦砲射撃の為に集結していたが、救助活動の為に 停船していた戦艦群の数隻に水柱が上がった。 父島に進出していた呂号艦隊5隻が硫黄島本部より指示を受けこの海域 で待ち伏せしていたのである。 駆逐艦隊と航空戦力を失っていた艦隊は著しく対潜能力が低下しており 呂号艦隊が放った95式酸素魚雷が命中するまで気づいていなかった。 95式酸素魚雷はその時代では最強の魚雷であり、命中すると船体に 直径5m以上の大穴が開く破壊力を持っていた。 航空機が放つ魚雷は短魚雷なので2~3発で沈む戦艦はないが、 潜水艦が放つ長魚雷は1発の威力が大きく、特に日本海軍のものは 3発も命中すれば戦艦でも沈没する可能性が高い。 ニューヨークをはじめとする新造された戦艦群が次々被弾し、夜半ごろ には戦艦3隻が沈没、2隻が大破の為戦線離脱していた。 予め攻撃時間を決めていた5隻の呂号潜水艦はドイツ海軍が行った ウルフパック(複数のUボートによる同時攻撃)のごとく 夕闇の中、停船中の正に的といえる巨艦に各艦4本、発射管故障で 1発が不発となったが、合計19本もの魚雷を放ち暗闇に紛れて その海域を離脱。父島基地へと帰還していった。 この作戦はF1戦闘機の攻撃で敵艦隊の対潜能力を低下させて、そこを 潜水艦同時攻撃するというものでシナリオ通りの結果となった。 米海軍では硫黄島攻撃に対する日本軍の注意をそらせる目的で関東地方を 空母機動部隊で空襲するジャンボリー作戦が予定されていたが、この被害 により硫黄島付近の戦力回復のため作戦は中止された。
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