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第2話 出会い
時系列は2年ほど過去へさかのぼる ***
「フッ フッ フッ ・・」
まだ日が昇る前の暗闇の中を一人の男がジョギングしていた。
男が走っているのは
岐阜県各務原市(かがみがはらし)那加官有地無番地
に所在する航空自衛隊の 岐阜基地 内にある滑走路であった。
岐阜基地は自衛隊の多目的飛行場となっており、旅客機などの離着陸は無い。
教育・実験・開発などの用途で使用されているので実戦部隊の駐留はなく、よってスクランブル発進はない。
そして1917年(大正6年)に陸軍により飛行場が開設された日本国内に
現存する飛行場では最も長い歴史を持っている。
川崎重工業(航空宇宙システムカンパニー)が隣接しており、
新型輸送機C-2や
対潜哨戒機P-1の開発もここで行われた。
三菱重工が開発した先進技術実証機 X-2 も主なテストは名古屋ではなく
ここで行われた。
このようなロケーションの中、1人ジョギングしているのは
航空自衛隊 3等空尉 岩橋 正宗(いわはし まさむね)
である。
彼は福岡県にある築城基地の第6飛行隊所属なのだが、近年導入された
無人偵察機「グローバルホーク」
とのデータリンク訓練の為、2か月ほど前から岐阜基地に赴任していた。
岐阜基地は近くに民家が多くあるため、早朝の飛行訓練は基本的に
行われない。
今日は令和3年1月10日。
時間は朝5:00頃だが季節的に日の出は7:00前後なので
あたりはまだ暗い。
2700mある滑走路の端のあたりにまで走って来た岩橋3尉がそこで
何やら明るい一角を見つけた。
早速そばまで近寄ってみた。
前に立つと幅10m、高さ5mほどのまるでトンネルのような明るい空間がそこにはあった。
好奇心旺盛な岩橋3尉は迷うことなくそのトンネル内に足を進めた。
次の瞬間、頭が「キーン」となり少しその場にうずくまった。
やがて正気を取り戻してきたので岩橋3尉は立ち上がり、
あたりを見回した。
あたりは明るいが太陽の位置からして早朝のようである。
明らかに異なる場所へ繋がっていると思い踏み込んでみたのだが、
岐阜基地内のようだ。
周りの山々などの景観は見慣れたものだった。
しかし、よく見ると滑走路がアスファルト舗装ではない。
見た目はコンクリートのようである。
遠くを見ると管制施設の形状が違う。
基地に隣接しているはずの自分がいま宿泊している団地群(官舎)もなく木造建築が見えた。
岩橋3尉があたりを見ていると、いきなり後から
伊藤少尉「貴様!そこで何をしておるか?」
と声が聞こえた。
岩橋3尉が振り返ると薄い緑色の飛行服らしきものを着た坊主頭の青年が
立っていた。
岩橋「どうも・・・」
岩橋「いやっ。 私は怪しいものではありません」
岩橋はこの景色、そして声をかけて来た人物を見てある程度の察しが
付いた。
岩橋(ここは多分 過去の岐阜基地・・・それも戦時中)
岩橋「私はこの近くに住むものです。ところで今日は・・・・
昭和何年ですか?」
伊藤「バカか貴様。今日は昭和18年1月10日だ!」
岩橋(やはり!! しかも年号は違うが日付は同じ)
岩橋「私はこの近くに住むと言いましたが、それは
今からだいたい80年後です」
伊藤「貴様何を言っておる。虚言癖でもあるのか?」
岩橋「・・・」
岩橋「そうだ。これを見て下さい」
そう言って岩橋3尉は後のポケットからスマートフォンを取り出した。
伊藤「何だそれは・・手鏡か?」
岩橋「これはスマートフォンと言う個人用の機械で・・・」
岩橋「本当はいろんな事がこれ1つで出来るのですが、
今の時代だと・・そうだ!!」
岩橋3尉は伊藤少尉の横に並びスマホを高く持ち上げて2人が写るように位置を決めて自撮りした。
撮った写真を岩橋3尉は伊藤少尉に見せた。
伊藤「何と!これは写真機か・・それも一瞬で しかも天然色!!」
岩橋はこの反応に「よしっ!」と思った。
岩橋「写真機にもなる機械です。あとここで出来ることは・・そうだ!」
岩橋3尉は画面をスワイプして電卓を起動した。
岩橋「こうすれば計算機にもなる!」
伊藤少尉も好奇心旺盛なようでしばらく岩橋3尉の説明とスマートフォン
にいろいろ表示される画面に見入っていた。
やがて・・・
伊藤「君に見せてもらったスマート・・何とかと言う機械。
それだけで君が未来から来た人だと納得した」
伊藤「君の事をもう少し教えてくれんか」
伊藤少尉はこの時23歳、偶然にも岩橋3尉と同い年で
2人は時代を超えて意気投合してしまった。
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