第7話 再会

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第7話 再会

昭和19年1月。 戦時日本の各務原陸軍飛行場(現代日本の航空自衛隊 岐阜基地)内にある ハンガー(格納庫)に1機のF2戦闘機が置かれていた。 これから始まる特攻作戦の代用となる米英戦闘艦への攻撃の為 現代日本より運ばれてきたものである。 これから沖縄方面に移動するため、点検整備が派遣されてきた自衛隊員達 により行われていた。 この情景を少し離れたところから岩橋3尉は見つめていた。 この機体は彼の愛機なのである。 その時、後ろから 伊藤「まさむね! 久しぶり」 の声に岩橋3尉は振り返った。 岩橋「やあ!きとく」 岩橋3尉は 岩橋正宗(いわはしまさむね) 伊藤少尉は伊藤喜得(いとうきとく) で親しくなっていた2人はお互いを下の名前で呼ぶようになっていた。 2人が出会ってちょうど1年が経過していた。 伊藤「これが君の愛機か?」 岩橋「そうだよ。どうだい?」 伊藤「まるで鋭い槍のようだ。大きいがこれは1人乗りか?」 岩橋「ああ。練習機には2人乗りもあるが・・」 伊藤少尉は未来の戦闘機をまじまじと見つめていた。 伊藤「これの武装は?」 岩橋「この時代と同様に機銃が1門装備されているけど・・」 岩橋「こいつは基本、対艦艇なので対艦ミサ・・」 岩橋「対艦用の誘導爆弾が4発搭載できる」 伊藤「誘導??・・爆弾」 岩橋「今の日本、いや世界にはないもので」 岩橋「放てば目標まで自立して飛んで行って命中する爆弾だよ」 伊藤「なんと! 放てば爆弾が自ら命中するのか?」 岩橋「僕たちの時代では機銃以外の武器はほとんどが誘導兵器なんだ」 岩橋「最近では誘導機銃弾が開発中だいう話を聞いたことがある」 岩橋「この爆弾による攻撃パターンも機械で計算されていて」 岩橋「米大型空母を撃沈できるパターンも計算済みと聞いている」 岩橋「放ったら爆弾任せで帰投するからこちら側の損害はゼロだ」 伊藤「未来は・・ まさむねの時代は人と人が戦う戦争しないんだな」 岩橋「そうだね。僕たちの時代では兵器の無人化も進んでいるしね」 伊藤「無人・・・。 無人の兵器が人殺しをするのか」 岩橋「そうなりそうだね」 伊藤少尉は感慨深げにF2戦闘機を見つめていた。 岩橋「ところで今日は?」 伊藤「そうだ。俺は今、三重にある明野教導飛行団と言う陸軍航空隊の 総本山みたいなところにいるんだが」 伊藤「陸軍の新型重戦 キ84の搭乗員に選ばれて」 伊藤「そこで訓練中なんだ。 でっ 新しい部隊の隊長に選ばれそうなんだ」 伊藤「部隊名は振武隊(しんぶたい)と言う」 伊藤「第57振武隊 隊長の内示をもらっている」 伊藤「それで、忙しくなるのでその前に まさむね に会っておこうと思って」 伊藤「ここまで飛んできたと言うわけだ。まあ、実際は司令官から 未来の戦闘機を見ておけと言われて来たんだが」 伊藤少尉はそう言って本人が乗ってきた外に駐機されているキ84を 指さした。 のちに四式戦闘機になる機体だがこの時点では正式採用前だったので 伊藤少尉が乗ってきたのは100機以上生産された試作機のうちの 1機である。 現代日本の介入によりこの時代で量産されるのは四式戦闘機ではなく これを高高度迎撃機に改良した 四式戦闘機 2型 通称 四式改 が量産される事になるのだが、まだ四式改は開発中で量産は 始まっていなかった。 伊藤少尉の戦隊も配備されるのはこの 四式戦闘機2型 になる予定である。 なぜなら、彼らの部隊は内地防空専門なので高高度迎撃機を必要とする からである。 2人はこの後もそれぞれの愛機談話で夜遅くまで話し込んだ。 F2戦闘機が超音速で飛行できる事に伊藤少尉は大変驚いていた。 ただ、コンピューター(電子頭脳)は伊藤少尉の想像の世界の外 だったようで「考えることが出来る機械」は理解してもらえなかった。 (キ84に関しては私の別作品 キ84 で詳しく解説しています)
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