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第1話 アレの阻止を始める
「ゴーーーーッ」
漆黒の闇を3機の戦闘機が編隊を組み高度6000mを飛行していた。
機体は航空自衛隊所属のF2戦闘機で、各機は
「80式空対艦誘導弾」
をそれぞれ4発搭載していた。
航空機から船舶に対する攻撃を目的とするのが空対艦誘導弾であるが
戦闘機クラスに4発搭載できるサイズのもの、そしてそれを
4発搭載できる戦闘機は世界を見渡してもそれほど種類は多く無い。
実際にこの手の兵器が活躍した実戦例はあまりなく、有名なものとしては
イギリスとアルゼンチンの間で1982年に勃発した
「フォークランド紛争」
でアルゼンチン空軍機がイギリスの駆逐艦に対して空対艦誘導弾を放ち
これを命中させてイギリス駆逐艦を無力化した戦闘がある。
この時、アルゼンチン空軍が所有していたのはフランスの
ダッソーミラージュ社が開発した攻撃機
「シュペールエタンダール」
でこの機体にはこれまたフランス製の
空対艦誘導弾「エグゾセAM39」
が1発搭載されていた。
攻撃機「シュペールエタンダール」はあまり高速機ではないし
兵器搭載量も2tほどでそれほど戦果が期待できる兵器ではないのだか、
1発のミサイルがイギリス海軍が誇る
駆逐艦「シェフィールド」
を無効化(後に沈没)させた事でこの一件の後、
空対艦誘導弾「エグゾセAM39」
は市場価格が一時、10倍にまで跳ねあがったそうである。
洋上を低速で移動する艦船にとって、空中を高速に誘導されて向ってくる
空対艦誘導弾は大変な脅威である。
この兵器のルーツを遡ると我が国の「特攻」に行き着く。
但し誘導は人であったが・・・。
当時の米海軍は「特攻」の脅威に対して早期発見を実現するべく
レーダーを中心とした防衛システムを発展させ、これが現在の
「イージスシステム」に繋がっている。
また、探知情報の共有化のため「コンバットデータリンクシステム」も
最近の先進国の軍隊では必須となっている。
例えば「ステルス戦闘機」は自らを隠すために自身は敵探知のレーダー波を発しない。
目標は他の味方に発見してもらって位置情報などをデータリンクシステムで教えてもらうのだ。
さて、3機の航空自衛隊F2の編隊が目標の艦隊まであと150kmに迫っていた。
沖縄にある司令部「こちら、鷲ノ巣。イヌワシ戦隊応答せよ!」
F2編隊の隊長機「こちらイヌワシ1 マウンテン。 鷲ノ巣 送れ」
鷲ノ巣「敵艦隊を捕えているか?」
隊長の山田2佐(TAC タックネームはマウンテン)が返答した。
山田2佐「こちらイヌワシ1 マウンテン。レーダー画面に敵艦隊を補足」
鷲ノ巣「これより目標艦隊上空の夜鷹とデータリンクを開始せよ!」
夜鷹とは航空自衛隊に配備された米国製無人偵察機「グローバルホーク」の事である。
山田2佐「イヌワシ戦隊各機。 夜鷹とのデータリンクを開始せよ!」
2番機のパイロット 河合2尉 「イヌワシ2 リバー 了解」
3番機のパイロット 岩橋3尉 「イヌワシ3 ロック 了解」
イヌワシ戦隊の各機はデータリンクの操作を行った。
夜鷹とは味方確認処理の後、通信が開始された。
イヌワシ戦隊各機のコックピットにはデータリンク専用のコンソールが
追加されている。これにより各種操作を行う。
データリンクが開始されると、イヌワシ戦隊各機のレーダー画面は
ややノイズまじりの点から、
目標の形状や大きさまで分かるクリアな画に変わった。
目標で長方形に表示されるのものはおそらく空母である。
更に各目標にはアルファベットが振られた。
鷲ノ巣「イヌワシ1 目標を指示する」
鷲ノ巣「イヌワシ1 第1目標 B ブラボー」
山田2佐「こちらイヌワシ1 第1目標 ブラボー了解」
鷲ノ巣「イヌワシ1 第1目標ブラボーの
攻撃パターン 101 ヒトマルヒト」
山田2佐「こちらイヌワシ1 第1目標「ブラボー」
攻撃パターン「ヒトマルヒト」 了解」
鷲ノ巣「続いてイヌワシ1 第2目標 B ブラボ-
攻撃パターンは 102 ヒトマルフタ」
先ほどから指示される攻撃目標のB(ブラボー)はレーダー画面で見ても大型で長方形なので隊長の山田2佐はこの目標が空母である事を察した。
山田2佐「こちらイヌワシ1 第2目標「ブラボー」
攻撃パターン「ヒトマルフタ」 了解」
本部からの指示は続く。やがて
鷲ノ巣「続いてイヌワシ3 第4目標 J ジュリエット
攻撃パターンは 301 サンマルヒト」
イヌワイ戦隊に最後の目標指示が送られ、戦隊各機は新設された
コンソールに目標への攻撃パターンのセットが完了した。
やがて、イヌワシ戦隊各機に対する全ての指示が完了した時、
敵艦隊との距離は50kmになろうとしていた。
80式空対艦誘導弾の有効射程は50kmと公表されている。
実際の射程はもう少し長いと思われるが
いずれにしても公表値以内の射程距離に戦隊は近づいていた。
鷲ノ巣「イヌワシ戦隊、攻撃開始!」
山田2佐「こちらイヌワシ1。イヌワシ戦隊各機 攻撃開始せよ!」
河合2尉 「イヌワシ2 攻撃開始します」
岩橋3尉 「イヌワシ3 攻撃開始します」
こうして、イヌワシ戦隊各機から4発ずつ、計12発の
80式空対艦誘導弾が目標に放たれた。
漆黒の闇の中を12本の矢は目標に向けて飛翔して行った。
イヌワシ戦隊は直ちに反転、沖縄にある基地へと帰投して行った。
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