逆夕立

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 まさか怪雨の類か。ファフロツキーズ現象というもので、空から魚介類や赤身肉、オタマジャクシなんかが降ってくる。  僕は真相を確かめるべく、カーテンを開け、窓の外を見た。  するとどうか、アスファルトが乾いている。やはりただの夕立ではない。  さらに今度は、ばちばちばっちぃち、と天井から鮮魚が跳ねるような音が聞こえた。うん、やっぱりこれは雨ではない。  眠気を気合で吹き飛ばし、僕は傘を持ってアパートの扉をあけた。街の空は橙色に染まり、夏の明るい夜の雰囲気だった。  夜勤明けに、少しだけ眠ったあとの太陽は、弱まっていても辛い。地方転勤に伴い、社会人2年目にして引っ越してきた街は、田畑のなかにマンションやモールが建つ、都会育ちの僕にとっては未完成な風景だった。  なるほど、ここなら怪雨(ファフロキーズ)あっても不思議じゃない。
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