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第1話
俺の名前は本田 広。
34歳、未だ女を知らず……。
顔立ちは中の中。要は中だ。
目も小さからず大きからず。鼻は小さいが日本人なら平均的だろ。唇も厚くなく細くもなく、小さくもない。
あくまで平均的。保健の教科書に載ってそう。
問題は体格かな? 身長は170センチだが、体重は関取サイズ(100キロ)
だから、平均サイズだった顔のサイズがモアイ象並みにデカくなった。
あとは服装か?
年中真っ黒なジャージ。というのは、太るからジーンズは高いしすぐにキツくなるから、母親に「安い500円のこれにしろ」と言われた。
500円って……そんなに価値ない? ってツッコミたくなるがね。
以来、ずっとジャージだ。別に俺なんか誰も見てないし。
靴も黒。キャップも黒の時がある。
名探偵コ●ンの犯人顔負けの黒ずくめだ。
まあ服装や髪型、それと自信さえクリアできれば、学生時代もリア充生活だって出来たはずなのだよ、多分。
だが、できなかった。というか、頑張らなかった。
ただただ時がくれば、いい女と出会い、いい生活ができるとなんとなく思っていた。
子供の頃は明るい性格で男友達も何人もいた。
もちろん友達とまではいかなかったが、クラスの可愛い女子とも遊んだりしたこともあった。
俺が住んでいた名古屋には6、7年はいただろうか?
だから、小学生時代はほとんど上記の町だ。
だが、父の職業が元々、転勤の多い会社に勤めていて、いずれは引っ越すと思っていた。
中学生になる前に名古屋から遠く離れた福岡に引っ越したことにより、以前住んでいたゆるい小学校とは違い、規則にかなり厳しく、その変化に対応しきれず、中学2年生で、不登校になってしまった。
もちろん男友達すらゼロ。
家に来るのはプリント持ってくる優しいクラスメイト。
というかウザいだけだったのだが。
その後、自分を変えようと勉強し直した上で、数年遅れで通信制の高校に通った。
卒業までちゃんといたが、月2回程度のスクーリングでいつ女の子と話す?
それ以上に高校でも友達も誰一人できなかった。
推薦入学した大学も似たようなものだ。
サークルにも入らず、ただただ毎日足を運ばせていただけだ。
だが、大学の男友達はいてもいなくても良かったかな?
独特のダサいセンスのファッション、いつも汗臭い、処女にこだわる…。
もう手遅れなのにプライドだけは高く、上から目線で女を見る、だけ。
夜間大学のせいか、選んだ学部のせいか、女性は10人もいただろうか?
しかも全員がブス。
あまりの大学のつまらなさに1年もしないうちに辞めてしまった。
親からの冷たい目に耐えられず、次第と部屋に引きこもりがちになっていった。
日中はずっと眠り、夕方に目を覚まし、行動を始める。
親の年金から得た小遣いで、ゲームを買ってクリア後も遊び倒す。
それに飽きると誰もいない深夜に散歩したり、コンビニに入ったばかりのマンガを買いにいったり、まあおもしろいよ?
今は平日のゴールデンタイムだから人も車もまだ多い。
まあ人は多いが、近所の古本屋に立ち読みでもいくか。
机の上にあったMP3プレーヤーを取ろうとした瞬間だった。
普段、誰からも鳴らない携帯が鳴った。
基本使用料しか払ってないガラケーだ。
大学に入学した時に契約してずっと同じ電話会社だ。
もちろん料金は親持ち。
「イッチーか……」
送信者を見ると以前住んでいたころの友達だった。
市原 海人。小学生時代の友人だ。
数少ない、というか現在、唯一残っている親友だ。
しばらく連絡をとっていなかった。
こいつも悪いやつじゃないが、かなりの『癖』を持っていて、変態さんでもある。
『ヒロちゃん、久しぶり! 唐突だけど、今度名古屋に遊びにこない?』
いや、唐突すぎるだろ…。
折りたたみの携帯を閉じようとした瞬間、ある映像が頭の中をよぎった。
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