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「ありがとうございます」
巡査が差し出した湿ったタオルで顔を拭った。
「拭くか?」
中西の鼻血で顔が血だらけなった峰子に訊いた。峰子が顔を出した。中西はタオルを裏返しやさしく峰子の顔を拭った。巡査がもう一枚湯に通したタオルを絞って差し出した。中西は丁寧に峰子の顔を拭う。
「ほら、きれいになった。全部とれた、あんたにくっ付いていた悪鬼までとれちゃったよ。映画の中の江利川峰子だ。本物の江利川峰子だ、なあ」
峰子の目が潤んだ。
「大したことねえよ。あの二人はあんたを訴えたりたりしねえ、調書取って終わりさ。すぐにスクリーンの天使江利川峰子の復活だ」
徳田と日出子が交番に来た。
「探偵紙くれ」
徳田が手帳を一枚破いて日出子に渡した。
「江利川さん、サイン書いておくれ」
日出子がペンと紙を峰子に出した。
「名前は?」
「日出子、日の出る子」
「あんた根性あるね」
江利川峰子が笑った。パトカーが来た。課長も乗っていた。
「中西、すぐに警友病院に行け。相馬紀子が死んだ」
「どうして?」
「行きゃあ分かる」
中西はタクシーを止めた。徳田も別のタクシーを止めた。
警友病院には県警の捜査員と鑑識が集合していた。多田は一命を取り留めたが相馬紀子は即死だった。布川は県警の刑事から事情聴取を受けていた。紀子は背中を撃たれて死亡、それも二発発砲している。
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