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「ここに戻って電話番をお願いします。時間があれば魚をさばいてくれるとありがたい、日本酒でも買ってきましょう」
高田は笑って頷いた。高田を見送り電話をした。相手は水島である。
「もしもし、探偵さん、待ってました。こちらから電話しようかと思ってました。今刑事が帰ったとこです」
「息子さん、残念です」
「お聞きになりましたか?早いですね」
「ええ、蛇の道は蛇、それが仕事ですから」
たまたま都橋の交番で巡査と合って伝えられたことは伏せた。
「来ていただけないでしょうか、改めてお願いがあります。金は用意します」
「何か思い当ることがあるんでしょうか?」
「悟は自殺なんかじゃありません。誰かに殺されたんです」
「分かりました、すぐに行きます」
水島は妻と長男を同時に失くして自棄になっている。小さくても持ち家、売却すればそれなりの金額を手にすることが出来る。真実を知るためには家財を投げ売ってでも思いを果たしたいに違いない。徳田はタクシーを飛ばした。すると水島が玄関前で待っていた。徳田が降りると水島はタクシーを待たせた。
「これから遺体の確認に行きます。あなたは私の義理の弟として一緒に付き合ってくれませんか?」
徳田は頷いて戸部西署に同行した。婦警の案内で遺体安置室で水島悟の遺体と対面した。啜り泣く水島の横で徳田は首の周りをじっと見つめた。
「すいません、義兄は先日妻を亡くし今日最愛の長男を亡くしました。ほんの数分で結構です、義兄に最後の別れを言わせてやってください」
府警と担当医は部屋を出た。徳田はカメラを取り出し首のアップを撮影した。水島の啜り泣きが止んだ。数分して婦警と担当医が戻って来た。
「最終確認ですがご子息に間違いないでしょうか?」
水島は頷いた。
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