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「死因はやはり自殺ですか?」
「詳しいことは解剖の結果になりますが、死因はベルトで締めた頸部圧迫だと思います」
担当医が答えた。
「自分で締めたんですか?」
「自殺だとそう言うことになります」
「死んでからナイフで首を刺した?」
「絶命する寸前とでも言いましょうか、ほぼ同時じゃないでしょうか」
「先生、死ぬ間際と言うかほぼ絶命状態で自分の喉を刺す力なんてあるんでしょうか?」
「それが人間の奥深いところです」
医者が坊主のようなことを言いだした。よく分からないのである。
「どうしても解剖しなきゃならないんですか?」
水島が担当医に訊ねた。
「検視案件ですから解剖となります」
二人はタクシーで水島宅に戻った。
「この写真を刑事からもらいました」
徳田は安置室の水島悟を頭に浮かべながら写真を手に取った。
「どこかおかしい所に気付きませんか?」
水島は探偵の器量を確認するつもりで訊いた。徳田はじっと写真を見た。
「セーターは水色ですね」
水島は刑事が気付かないことを探偵は気付いたと感じた。改めて徳田の器量を見直した。徳田は実際に水色のセーターを着ている悟を目撃している。だから水色のセーターと答えただけだった。
「そうなんです。あの子は帰宅時も母を手に掛けて出て行くときも鼠色のセータでした。どこかで水色のセーターに着替えたんです」
「私の推測通りですね。この写真を見てすぐに不思議に思いました」
徳田は巧いこと口裏を合わせた。
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