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「是非お願いします、うちは少々コスト高ですけど、妥協の許さない、最高の製品をお届けいたします。貸して良し、借りて良し、住んで良しとご好評いただいております。すぐにも営業を寄こします」
嘘八百はシミュレーション済み。
「手続きはそちらでお願い出来るのかね」
「はい、必要書類をお預かりすればこれからでも、二日後にはお手元に現金が届くと思います」
「私共の口座を開設いただき責任持ってお届けに参ります」
大手建設会社と大手銀行に安心し切っている。
「ご子息にはお伝えしなくてよろしいのでしょうか」
亀山がカマを掛けた。連絡されてはまずいが安心させるためである。
「子供達に伝えたら大変、孫に知れたら車だヨットだってそれこそ小遣いせびりが始まる。苦労していないからお金の大切さを知らないの。逆にあなた方から知らせないでね。いずれ知れてもあたし達はもうすぐガン箱入りですから」
夫人が笑うと主人も頷いた。
「失礼しました、ここだけの話とさせていただきます」
亀山が唇に人差し指を当てて「しーっ」と息を吐いた。夫人が笑って頷いた。土地売買に必要な登記済証他を預かった。
「奥様、これは当方で「ご用意したご夫妻へのささやかなプレゼントでございます」
封筒から出したのはスリの上りで女ボス湯山玲子から地面師仕込みのために回された五十万である。
「あら、いいのかしらこんなに」
夫人が満面の笑みで収めた。
「印鑑証明はどうされますか、もし私で信用いただけなければ添田さんにお願いいたします。出来れば今日中に先方に話を付けられることがお勧めでございます。同業にしれますと妬みますので」
「それじゃ東横さんにお願いいたします」
「確かにお預かりいたしました。明後日の午後一に、二千万円が入金された口座と共にお返しに上がります」
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