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「何だ?一人で抱え込むな、気になることがあったら言ってみろ。ここで言わずに後悔することもあるぞ」
多田が並木の思案に気付いて忠告した。
「はい、まあ関連は薄いと思いますが尻手駅で尾行中に疝痛の女を介抱しました。その女が今朝も路地から出て来たのを確認しています。今日はブルーのスカートでしたが、その時は白い服装だったのでちょっと気になっただけです」
「いい女か、声を掛けられたらぞくっとするようないい女だったか?」
並木は想い出している。背を擦り回復した時の笑顔は確かに頭抜けたいい女だった。
「いい女だったようだな」
多田がにやけた並木を見て言った。
「あっ」
並木が何かを思いついた。二人の捜査を付き合わせていく過程で重なることが見えて来る、複数を付き合わせる作業で成立する新たな情報が発生する。多田が注意したようにどんな些細な情報でも自分の胸中にしまっておいてはそのまま消えてしまう。
「多田さんも尻手で尾行中に年寄りに道を尋ねられたんですよね?」
多田は並木の言いたいことが分かった。
「確かに偶然にしちゃおかしいな。奴等は俺達を敏感に察知するからな。そう言えばあの老婆、俺に訊いた行先は東京、窓口の駅員は三軒茶屋までの切符を購入したと言っていた。もし並木君の推理が当たっていりゃ俺達の面は割れてることになる」
「面が割れてると言うことは足を出さないと言うことですか?」
「少なくとも俺等を感じたら仕事はしない。箱士を張っていても意味がないと言うことだな」
多田が失笑した。
「どうしたらいいでしょう?」
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