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「水島悟は相当酒を飲んでいた。ワインのようだ。あの場所まで引き摺られるように進んだ。そして木の根に寄り掛かる。そこで自害したとも考えられる」
「そりゃあありませんよ」
中西が吉川の推測を否定した。吉川は早く一件落着としたかった。
「一人で歩けないほど酔っぱらって、自分の首を絞めて、尚且つ喉を刺すなんて出来っこない。泥酔して先ず陥るのが睡魔です。これはいくら自殺願望が強くあっても勝てる相手じゃありません。泥酔で可能な自殺方法は飛び降りだけです」
布川が中西をフォローした。
「あんたの予測か?」
確かに布川の予測に過ぎない。
「足跡は小さいですね、22と23。男だとしても子供、女かもしれませんね」
「飲み屋で泥酔した水島悟を処分に困り野毛山に放り投げたんじゃないか」
吉川はあくまでも自殺の線を崩さない。
「消えた足跡はどうなりました?」
「ちょっと待ってくれないか、お宅等にお願いしたいのはそう言うことじゃない。自殺するまでの経緯をまとめてもらいたいんだ。俺が言ってるんじゃない、ずっと上の方から紙切れ一枚で伝わってきたことなんだ」
「親殺しは自殺が似合う、美談ですか?」
「こう言っちゃなんだがこれでよかったんじゃないか」
確かに世間体は納得する。親に手を掛けた精神的に問題がある長男がそれを反省し苦にして自らの命を絶った。遺書めいたものまで出ている。
「父親は自殺などしないと言ってました。その理由を聞くと親にしか分からないとの答えです。父親は初めから自殺だなんて信用していませんよ。もし水島家への恨みがある者の犯行なら父親まで危険に晒しますよ。美談総崩れ警察威信がた落ち」
「なに?」
中西の誘い言葉に吉川がムッとした。
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