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「該者が駄目押しで喉を突いたナイフは菊名の刺殺体の凶器に使われた可能性があります」
「可能性は何にでもある。宇宙人がいる可能性もゼロじゃない」
「課長、これでも自殺と断定して終わりにしちゃうんですか。絶対に出来ないことばかりですよ。これで終わりにしていいんですか、税金で只飯喰らって情けなくないですか」
「だったら宇宙人連れて来い。私の前に差し出してみろ。そしたら県警部長だろうが総理大臣だろうが私が説得してやる」
課長に一喝された。反論のしようがない。これが証拠ですとひとつでも差し出せば百聞は一見に如かずである。
「あ~あ、課長怒らしちゃた。課長の言う通りだ。どれもこれもお前の勘だけ、誰も信用しない。ねえ課長?」
榊が媚を売る。
「うるさい、私に相槌を求めるな。いいか二日やる、今並べた御託のひとつでもいいからここに持って来い、出てけ」
課長が退散を命じた。榊刑事が「自分も?」と人差し指を鼻に差した。課長は大きく頷いた。
「布川」
廊下に出ると布川だけが呼ばれた。
「並木と合流していろ」
布川に指示され中西は頷いて幸町の喫茶『樹里』に向かった。
「なんでしょうか?」
「どうだ中西は?」
「どうと言われましても、見たまんまの若者です」
課長は中西を心配していた。正義はいいが組織を壊してしまわないか、布川にその辺りの教育をさせたい。
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