都橋探偵事情『莫連』

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「白っぽい服装で年の割には地味な感じがしました。身長は150センチくらい、ぽっちゃりしていました」 「その女は一人でしたか?誰かと話しているとか」 「それは気付きませんでした。通勤時間帯は誰も話しませんよ。電車が揺れれば他人に寄り掛かる形ですからね。息も気になるしまず話す人はいませんね、 学生は別ですけどね。そう言えば学生がいたな」 「どこの学生だか分かりませんか?」 「そこまでは、ただ大学生であるのは間違いありません、一人でした」  二人は事細かに聞いた。スリの集団の一人でも捕らえ、殺された男の身元から捜査を始める。被害者三人は被害届を提出して会社に向かった。多田が飯でも食おうと二人を誘った。東神奈川駅を出て大衆食堂に入った。 「先ず言っておく。さっき被害者が話した服装のことは頭から省いた方がいい。奴等は七変化、それに目立たない服装をする。白い服とか学生服とか固定観念に捉われんことだ。しかし不定期だが同じ服を着ざるをえんだろうな」 「それはどうしてですか?」 「俺の調べじゃ奴等は二週間から様子によっちゃ一月間、それくらいのスパンで移動している。毎日着替えるだけの服は持っちゃいない」  並木が頷いた。 「だけど奴等プロだから服ぐらい軽く万引き出来るんじゃないですか?」  中西がどうだと言わんばかりに意見した。 「それはご法度だ、ガキの万引き集団とは違う。現金しか狙わない。万引きすれば必ず被害届が出る。自分で自分の首を絞めることになる」  多田に論破された。中西はぺこんと頭を下げた。 「多田先輩、それじゃ俺等はどうすればいいんでしょうか?」  並木が一日の長に指導を願い出た。 「連携取ろうじゃねえか、俺の情報は流す、君等の情報も欲しい」  多田が毎日の情報交換を薦めた。場所は横浜西口の喫茶店『樹里』内幸町にある。
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