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「最後に顔を合わしたのは何処ですか?」
「石川町駅です」
「服装は?」
「水色のセーターに黒いズボンです」
「コートやジャケットは手に持っていませんでしたか?」
コートを持っていれば有力な手掛かりになる。大概朝晩はコートを羽織るからである。
「持っていませんでした」
「その時お話は?」
「走って逃げました」
徳田は詳細を聞き取る。
「最後にひとつ、お二人がそこまでして成人したご長男を心配されるのはどうしてでしょうか?」
これは依頼とは直接関係のない質問である。だがその思いを知ることでインスピレーションが湧く。勘働きでは抜きん出ている徳田である。鍵を握る質問でもある。
「ナイフを持ち歩いているんです」
聞いてよかった。
「どなたのナイフですか?」
「私のものです、登山用です」
「ご長男の性格は?暴れたりしますか?」
「高校生の頃には家内に暴力をふるっていましたが、最近はなくなりました」
夫人が何か言いたそうである。
「奥さん、何か気になることでもありますか?」
夫人は少し考えて口を開いた。
「最後に会った時の目が高校生の時、私に襲い掛かる目と同じでした」
夫人が涙声で言った。
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