61人が本棚に入れています
本棚に追加
「ありがとうございます。貴重な情報助かりました」
依頼金は前金でいただいた。これで今月はやりくり出来る。徳田は早速調査に掛かる。ナイフを持った男である。徳田は黒のコートを羽織りスライド式ステッキを内に掛けた。ステッキがしっかりと固定されるようにホックの止めを二か所付けた。道子のお手製である。廊下に出る、左右と福富町西公園に怪しい影がないことを確認してドア上部に名刺を挟み込んだ。海風が肌を刺す昭和四十三年三月二十日である。
関内駅のベンチに男が寄り掛かっている。眠っているような死んでいるような。客と別れて自宅根岸まで帰る女はブレザーの内側に覗く札入れが気になった。周囲を見回す。始発が到着するまで十五分。
「お兄さん」
小声で呼び掛ける。
「お兄さん、風邪引くよ」
「カコッ、キコッ、クワッ」
歯ぎしりと鼾の入り交じり。女はもう一度周囲確認。左手をサッと男の懐に差し入れ札入れを抜いた。
「バァー、騙された~」
男は女の手首を掴まえ笑った。スリを囮で誘っていたのは伊勢佐木中央署の中西刑事である。
「てめえ、ポリか、きたねえマネしやがって」
「そう、私は汚いポリ公です。現行犯だ、3月21日04:16.逮捕するぞ」
手錠を掛けた。隠れていた相棒が階段を上がって来た。
「どっかで見たことのある女だな」
伊勢佐木中央署の布川刑事が女の顎を上げて言った。
「この辺りのパンパンでしょ。外れですね、どうします」
「折角だから話だけ聞かせてもらおう」
最初のコメントを投稿しよう!