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翌朝署では大騒ぎしていた。
「戸部西管轄で傷害事件だ」
伊勢佐木中央署の丹羽課長が全員を集めて言った。
「課長、殺人になりました」
戸部西からの連絡があり傷害から殺人に切り替わった。
「犯人は逃走中、よって一時受け持ち捜査は止める、布川、お前等三人で戸部西と合流してくれ。残りは逃走している足取りを追う、榊刑事が指揮を執る」
県警の榊刑事が班長となると聞いてみんなゲンナリした。
「戸部西署からの報告。逃走犯は西区西平沼十五、水島悟二十一歳、被害者は母親水島洋子四十八歳、今連絡があったように病院で死亡が確認された。それから父親水島信明五十一歳が掌に傷を負っているが命に別状なし。悟が家を飛び出した時の服装が鼠色のセーターに黒のズボン。ゲソはサンダル、凶器は持っていないがどこかで調達する可能性もある。犯行から二時間が経過している。市電、国電、私鉄最寄り各駅にもぬかりなく聞き取りを行う事。一時間ごとに署に電話を入れる事。いいな」
県警の榊ここにありと張り切っている。
「よし行こう」
布川が号令を掛けた。
「布川さん、神奈川西署の多田さんと待ち合わせがありますがどうしましょうか?」
並木が訊いた。
「十時だな、電話は繋がるのか?」
「はい、メモしてます」
「喫緊だから理解してくれるだろう、電話しろ」
並木は頷いた。
「布川さん、並木だけでも行かせてやるわけにはいきませんか。この一両日が非常に大事なんです、昨日の並木の収穫は大きい、一日空けると振出しに戻ってしまいます」
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