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中西が布川に食い下がる。正直並木の頭には菊名駅での殺人事件しかない。昨日の聞き取りから得た事実を今日確実なものにするために昨夜は徹夜でまとめていた。
「いいだろう、並木お前は引き続き追え」
中西の助言で並木は多田と合流することになった。
「あいつ、根をつめてるな」
布川は並木の性格をよく知っている。没頭して他を見失う。
「こっちが片付けば俺が解しますよ」
中西も心配している。しかし中西が変わるわけにはいかない。多田から邪魔者扱いされているし並木のことを買っている。
「多田さんが並木を弟子に欲しいらしいです。あいつはちんちくりんですばしっこいからスリ相手には丁度いいらしいです」
「お前は駄目か?」
「多田さん曰くカッコ良過ぎるらしいです。俺がいると場が華やかになってスリ共が仕事にならないらしいですよ。それに」
「さあて挨拶するか」
戸部西署に到着した。中西の自慢話は聞き飽きている。遮って階段を駆け上がった。戸部西署の担当に挨拶した。
「吉川です。宜しくお願いします。逃走している倅の親父が来ている。似顔絵を作成しているがまだ出来ていない。これが倅だ」
吉川刑事は数枚の写真を見せた。
「ただし髪型違う、今はスポーツ刈りらしい」
肩までの長髪とスポーツ刈りとではだいぶ印象が変わる。むしろこの写真を見ずに似顔絵が欲しかった。
「親子喧嘩とか?」
布川の質問に吉川は首を振った。
「精神的に異常があるらしい、高校一年の時から不登校だ。死んだ母親への暴力はその時から始まっていたらしい」
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