8話

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8話

「ん…」 あれ…ここ…? 「あ…」 一瞬、ここが何処なのか分からなかったけど、隣で圭太が寝てるのを見て一気に昨日の記憶が蘇った。 「うわ~…」 滅茶苦茶恥ずかしい。 ちょっとどんな顔すればいいか分からない。 圭太が寝ていてくれて本当良かった。 「ん~…」 「あ…起きた?」 「ん…おはよ」 「おはようって時間でも無いけどね…」 もう時刻はお昼近く。 こんな時間なのは、本当に中々寝かせてもらえなかったせいだ。 「…顔赤いけど。昨夜の事思い出した?」 「…違う」 「嘘ついてもバレてるからな。お前が嘘つく時の癖知ってるし」 「私だって知ってるし」 圭太は嘘つく時、必ず小鼻がピクピク動く。 多分本人は気付いてないけど。 「…なあ、瑞希」 「ん?」 「こっち戻って来いよ」 「それは…すぐには、無理かな。仕事もすぐには辞められないと思うし…」 「…結婚するって言えばいい」 「は…?」 結婚…? 「俺は瑞希と結婚して、ここで一緒に暮らしたい」 「…本気?」 「こんな事冗談で言うわけないだろ。他の女じゃ駄目な事はずっと前から分かってたから、見合いも断ってたんだし。お前と出来ないなら一生独身のつもりだった」 「圭太…」 「だから、俺と結婚して欲しい」 「…私でいいの?家事とかそんなに得意じゃないし、面倒臭がりだよ?」 「お前が面倒臭がりなのは昔から知ってるし、家事は俺も手伝う。…俺は瑞希以外は無理だから。瑞希がいい」 流石に、まだそんな事までは考えて無かった。 年齢的には意識してもおかしくはないけど、まだ再会して数日だし。 けど… 「…不思議」 「何が?」 「圭太と結婚するとか考えた事無かったのに、今はっきりとイメージ出来たんだよね」 「イメージ?どんな?」 「…子供と圭太と3人で、仲良く歩いてるところ」 「!」 頭に浮かんだ、絵に描いた様な幸せそうな家族の姿。 子供を抱いた私と圭太が、笑顔で並んでた。 どうしてそんな絵が浮かんだのかって考えたら、答えは1つしかない気がする。 「…ねえ、圭太。おばあちゃんとおじいちゃんになってもさ、仲良くたこ焼き半分こしてくれる?」 「…当たり前」 圭太の腕が伸びてきて、優しく抱きしめられる。 私も圭太の背中に腕を伸ばして抱きしめ返した。 「ちゃんと帰ってくるから、待ってて」 「…俺が待ちきれなくて迎えに行く前に帰って来いよ」 「あは。意外と寂しがり屋だもんね、圭太」 「…うるせー」 甘えるように首元に顔を埋めてきたから、髪を撫でてあげる。 しばらくそうしていたら、突然首元に妙な感覚を覚えた。 しかも、なんかチリッと痛かったような… 「圭太…?」 「ん~?」 「何してるの…?」 「…何もしてないけど?」 絶対嘘だ。 鼻は見えないけど、言い方で何となく分かる。 どんどん顔が胸の方に下がってきてるし、ついでに手の動きも怪しくなってきた。 「ちょっと圭太…!」 「まだ時間あるだろ。また瑞希の事感じたい」 「駄目だって。家帰らないと…」 「今帰っても夜帰っても一緒だぞ。どうせバレてるだろうし」 「そうかもしれないけど…」 私も薄々バレてるだろうとは思ってる。 思ってるけど… 「あっ…こら、どこ触ってんのよ…っ」 「…瑞希の良い所?」 「バカっ…」 「余計な事考えずに、俺に集中しとけ」 「んんっ…」 最初から深いキスに、まだまだ帰れそうにない事を悟った。
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