4話

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「また来てね、瑞希ちゃん」 「お邪魔しました」 夕飯をご馳走になって、おばさんに見送られながら玄関を出る。 「ごめんね圭太。すぐそこなのに送らせちゃって」 「別に。送らねえとお袋がうるせえからな。…お前も一応女だし」 「一応は余計でしょ」 ちょっと睨んでやろうと横を見ると、見えたのは筋肉の付いている男の人の腕。 顔は見上げないと見えない位置にある。 …そっか。 中学生の頃は、まだ圭太の身長そんなに伸びてなくて、横を見れば顔があったのに。 知らない間に、こんなに見上げなきゃいけなくなってたんだな… 「…ねえ、圭太。1つ聞いていい?」 「何?」 「中学生の頃さ、私の事急に避け始めたよね?あれ何で?」 「は?!そんなの…瑞希の気のせいだろ」 動揺してるってことは、気のせいじゃないって言ってるようなものじゃない。 「じゃあ、私が高校に入ってから全く会わなくなったのは?それは何で?」 「それは…」 「それは?」 1つ目の曲がり角を曲がって、圭太の足が止まった。 「圭太?どうしたの?」 「瑞希が…」 「ん?」 「お前が、彼氏とか作るからだろ」 「は?彼氏?」 …あ! そういえば、初めて彼氏が出来たのって高校1年の時だった。 でも何でそれで私と全く会わなくなるの? 「それが会わなくなった理由なの?」 「…もういいだろ、その話は」 「よくない。私ちょっと寂しかったんだからね!」 「…ちょっとかよ」 「え?」 「…もういいから、行くぞ」 「ちょっと待ってよ」 有無を言わさず歩き始めた圭太に、小走りで駆け寄る。 …触れたらいけない事だったのかな。 一瞬圭太の表情が悲しそうだった気がする。 何となくそれ以上話しかける事が出来なくて、お互いに無言で家の前に辿り着いた。 「…送ってくれてありがと」 「…ん」 何か…気まずい。 「…なあ」 「ん?」 「今は?」 今は? 「って、何が?」 「彼氏いるのか?」 「いない、けど…?」 「ふ~ん…」 聞いといて、ふ~んって何なの。 「…明日、花火大会あるだろ」 「花火大会?…ああ、昔からやってるやつ?」 「ああ。…一緒に行くか?昔みたいに」 「…行く相手いないの?」 「お前ムカつくな」 「別にバカにしてるとかそういうのじゃなくて」 「居たら誘わねえだろ」 それもそうか。 「で?どうなんだよ」 「行く」 「じゃあ、明日19時前に迎えに来るから、ちゃんと準備しとけよ」 「分かった。また明日ね」 「おう」 圭太と花火大会行くのなんて何時ぶりだろう。 中学生の時には行った記憶無いから、20年ぶりぐらいかも。 あの頃は2人とも浴衣着て行ってたなあ。 明日、浴衣着て行こうかな。 あったらだけど。 …楽しみだな。
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