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6話
圭太に告白されてから2日。
1つの答えを出した私は、夜になるのを待って圭太の家に向かった。
「こんばんわ~」
「は~い!…あら。瑞希ちゃんじゃない。どうしたの?」
「圭太居ます?」
「居るわよ。圭太~!」
少しして、2階から降りてくる足音がする。
「何?」
「瑞希ちゃんが来てるわよ」
「え…」
私を見た圭太が、一瞬複雑そうな表情をした。
私がどうして来たのか分かったんだと思う。
「今から2人で花火しない?」
「…花火?」
怪訝そうな圭太に、手持ち花火のよくあるセットを見せる。
「久しぶりにどうかなって思って」
「…別にいいけど」
ちょっと準備してくる、と再び2階に上がった圭太を、玄関の外で待つ。
さて、上手く伝えられるといいんだけど…
「お待たせ」
「うん」
「どこでやんの?」
「公園は?」
「人居ると思うぞ。高校生とか」
確かに居そうだな…やんちゃな子達が。
夏休み中だしね。
「2人だけになれる所がいいんだけど…」
「…もう1つの家、行くか?」
「もう1つの家?」
「2年前ぐらいに、俺が建てた自分の家」
「え?圭太が建てたの?!」
何それ凄い!
「元々じいちゃんとばあちゃんが住んでた家を壊して、新しく建て直した。死んでからずっと放置されててボロボロだったし」
「そこ行きたい!」
「じゃあ…車で行くか。ちょっと上るし」
圭太の運転で行った先にあったのは、立派な2階建てのお家。
「え…これ圭太が建てたんだよね?」
「まあ、親父達にも手伝ってもらったけどな」
「だとしても凄いよ!…あれ?でも、圭太実家にいるよね?何でこっちに住んでないの?」
「…いつもは、週の半分はこっちにいる。今は瑞希が戻ってきてるから、実家にいるだけだ」
「そうなんだ…」
私がいるからなんだ…
それにしても凄いな。
圭太が家を建てるなんて、あの頃は想像もしてなかった。
でも、何で家建てたんだろう。
1人暮らしするには広すぎると思うんだけど。
「花火するんだろ。バケツに水入れて持って来る」
「うん」
庭で待っていると、バケツとロウソクとライターを持った圭太が戻ってきた。
準備をして1本目の花火に火を点けると、パチパチと綺麗な花火が広がる。
「手持ち花火も綺麗だよね」
「そうだな」
「圭太さ、何でこの家建てたの?1人で住むには広くない?」
「…瑞希と一緒に住む為」
「え?」
「…って言ったらどうする?」
「どうするって…」
どう答えるべきか悩んでしまう。
「半分は本音だけど、本当は、お前が結婚した時の逃げ場が欲しかっただけだ」
「逃げ場?」
「俺は、お前が他の男と居るのは2度と見たくないから。実家だと嫌でも見たりするかもしれないだろ。2階建てにしたのは、特に意味は無かったけどな」
「圭太…」
圭太の答えを聞いて、胸が苦しくなった。
…ちゃんと、話さなきゃ。
「あのさ…花火大会の時の事なんだけど」
「…ん」
「この2日間、ずっと圭太の事考えてたんだ。圭太の事、本当はどう思ってるのかって」
「…」
「…圭太に、昔からずっと好きな人が居るって聞いた時さ、私悲しかったんだよね」
顔を俯けていた圭太が、初めて私の顔を見た。
「私が知らない圭太がいるのが、悲しくて寂しかった。自分が知らない圭太を知ってる人に嫉妬するぐらいにはね。15年も会ってなかった癖に変だと思うでしょ?」
「いや…」
「私さ、気付いたんだよ。自分から会おうと思えば会えたのに、何で圭太に会おうとしなかったのか。…拒絶されるのが、怖かったんだと思う。圭太に嫌われてるなんて知ったら…それこそ立ち直れなかった」
ずっと違和感を感じてた。
何で全く圭太と会わなくなったんだろうって。
いくら避けられてたとしても、こんなに家が近いんだから偶然会う事ぐらいあったはずなのに。
きっと、知らず知らず私も圭太を避けてたんじゃないかな。
「自覚してなかったけど…あの頃私も圭太の事、好きだったんだと思う。」
家を出てから、1度も圭太の事を思い出さなかったわけじゃない。
でも、まるで忘れたいみたいに、思い出さなくなった。
多分、無自覚に失恋したみたいな…そんな感じだったから、圭太の事を思い出すのが辛かったのかもしれない。
「…この2日間、圭太の事考えてたって言ったでしょ?」
「…ああ」
「圭太の隣に他の女の子が居るのを見て、耐えられるのかなってずっと考えてた。何回考えても、どんな風に想像しても…全然無理だった」
「瑞希…」
「圭太の隣に他の人が居るのなんて、見たくない。そんなの、私耐えられないよ」
今までは、浮気されても二股されても泣きもしなかったけど、圭太は想像しただけで泣きそうだった。
こんな10年以上も経って、自分の本当の気持ちに気付くなんて鈍感過ぎるけど…
好きだと思って付き合ってた人でも、何か違うと思ってたのは、心の中にずっと圭太の事があったのかもしれない。
「圭太の事が好きだよ。圭太の隣には私が居たいし、私の隣には圭太に居て欲しい」
「…」
………あれ?
圭太が微動だにしないんだけど…?
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