7話

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7話

「圭太…?聞いてる?」 「…」 「おーい」 顔の前で手を振ってみたら、手首をガシッと掴まれた。 やっと反応したと思った瞬間、そのまま思いきり抱き締められる。 あまりにも強い力で抱き締められて、身動きが出来ない。 「圭太…ちょっと苦しい…」 「俺…もう絶対瑞希の事手離せないぞ。それでもいいのか?」 「…うん」 「瑞希」 「ん…?」 「おばさんに、今日は俺ん家に泊まるってメールしとけ」 「へ?」 「俺、今日は瑞希の事帰せないから」 急に腕の力が緩んで、至近距離でじっと見つめられる。 もう唇が触れそうな所まで顔を近付けて、圭太の動きが止まった。 「圭太…?」 「早く連絡」 「こ…こんな状態でどうやってするのよ」 「でも俺、一回キスしたら止まれなくなる」 「だったら少し離れて…」 「無理。絶対嫌だ」 「あのね…っ」 一言言ってやろうと口を開いたら、圭太との距離がゼロになった。 「んっ…」 「…バーカ。こんな外で暴走するわけねえだろ。誰かに見られたらどうすんだよ」 「なっ…」 「瑞希を見ていいのは、俺だけだろ」 「…バカ」 「でも、あんまり余裕ないのは本当。だから、早く連絡しろよ。俺もお袋に、こっちの家に泊まるって連絡入れるから」 「うん…」 圭太と離れて、お母さんにメールを打とうとするけど、何だかいけないことをしているような緊張感で、指が少し震える。 やっとの思いで送ったら、すぐに返信が来た。 帰ってくる前の日、何でメールを見てなかったのか不思議過ぎる。 しかも、迷惑かけないようにしなさいよって…昔圭太の家に泊まった時と同じ事言ってるし。 「何歳になっても子供は子供って事か…」 お母さんからのメールを見ていたら、急に後ろから抱きしめられた。 顔がすぐ横にあるせいで、圭太の息が耳にかかって擽ったい。 「連絡出来たか?」 「う、ん…」 この距離感がものすごく恥ずかしい。 「…照れてんの?」 「うるさいよ…」 「そういう顔、初めて見る」 そりゃそうだよ。 圭太には見せた事が無い。 「…俺の知らないお前を知ってる男に、今すっげえ嫉妬してる」 「圭太…」 「だから、全部教えろよ。俺も教えてやるから」 「うん…全部教えて」 私の知らない圭太の事、全部知りたい。 「…瑞希、俺の首に腕回して」 「何で?」 「いいから」 言われた通り腕を回すと、足をぐっと持ち上げられて突然体が浮いた。 所謂お姫様抱っこの状態で、圭太は何事も無いように歩き始める。 「圭太?!」 「俺がベッドまで運ぶ」 「だって…重いでしょ?」 「重い」 「ちょっと!」 そこは重くないっていう所なんじゃないの?! 「嘘だから暴れんな。重いなんて思うわけないだろ。好きな女なんだし」 「ん…私も好き…」 ぎゅってしがみついたら、圭太の歩くスピードが速くなった気がする。 「本当お前…知らねえからな、どうなっても」 ちょっと乱暴に玄関を開けたかと思うと、そのまま凄い勢いで家の中を進んでいく。
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