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 *  人が暮らすエリアでは、澄んだ水には、あまり大きな生物は住まない。しかし天敵がいない土地なら別だ。そいつらは大きくなり、そして自分のエリアを脅かす敵を排除しようとする。あるいは珍しく手に入りそうな大きなエサに吸い寄せられる。  誰かが夢中で撃っていた銃弾が切れたようで、マモルは助かったと思いながら現場に走り近づいた。草の間から見えていたのは、中型のタイコウチが一人の足を水に引き込んでいて、陸では夜行性のアシナガバチが警戒して侵入者たちを追い払おうとしているところだった。  挟み撃ちか。マモルは腰のスプレーを取り、まずはハチに襲われている方に薬剤を吹き付けた。そしてタイコウチの方に銃を向ける。ハチが敵を変えてマモルの方に一部がやってくるので、払いつつ薬剤を吹き付けつつ撃つ。  もうホタルなんてどうでも良かった。  がさりと音がして、マモルは暗い藪に首を向けた。やめてくれ。  狐だか狸だか、あるいは野犬だか知らないが、獣らしき黒い影が現れる。今は来るな。そう願うが、低い唸りが聞こえ、マモルはハチに包まれていた奴の体をひっくり返す。気を失っているが生きているようで、マモルはそれを確認すると目を上げた。獣が藪から飛び出してくるのが見える。  背後からエンジン音と藪をわき分ける音がして強い光が視界を照らした。獣が驚き、そして慌てて藪へと逃げていく。 「へへん」  自慢げなリベルがジープの窓から顔を出し、マモルは「窓を閉めろ」と怒鳴った。一部のハチがジープの窓に攻め込もうとする前に、マモルはハチにスプレーを向け、銃を出した。
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