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展示会場は、リゾートホテルの全体を使ったものだった。プールや芝生エリア、南国の花が咲くガーデンも会場になっていて、陽気な音楽と甘い花の香りが開放感を演出していた。
マモルはにぎやかな会場を歩きながら、ダークな雰囲気は全然ないなと思った。以前、リベルに連れて行ってもらった取引所は明らかに地下で薄暗かった。しかしこの会場はお祭りみたいに明るく楽しげで、人々もカクテルを片手にリゾートファッションで談笑していた。金持ちが南国のビーチに集まったみたいな空気が漂う。
ポロシャツにジーンズのマモルは、まるでホテルの使用人みたいだった。実際、何人かに声をかけられた。トイレを聞かれたり、酒を注文されたり。そのたびに隣にいるリベルが笑いながら断った。リベルは麻のジャケットに高価そうな靴、それからブランドのサングラスをしていた。指についているリングも、腕時計もたぶん高いのだろう。だから誰もリベルには道を聞かない。
「戦闘ショーが終わる頃には、君を見て誰もトイレを聞かないって」
リベルが慰めるように言い、マモルは別に気にしてねぇしと思った。
くじで決めた出場順は四番目だった。それが獲物を選ぶ順にもなる。
二人は軽く獲物も見に行った。他の戦士もいて、マモルは彼らの筋肉に驚いた。全員が二メートル近い身長で、体重も百キロ以上ありそうだった。プロレスラーじゃないのかとリベルに言ったら、あの人は前回の優勝者で、カマキリの首を素手でへし折ったらしいよと楽しそうに教えてくれた。
彼らはマモルを見て安心したようだった。マモルは獲物を視察したのだが、他の戦士に視察されたような気分でエリアを出た。
「勝てる気がしないんだけど」
マモルが言うと、リベルはケラケラと笑った。
「大丈夫だって。展示の武器も見に行こうよ。みんな戦士には使って欲しいから、すごく売り込みかけてくるよ。気に入ったのを使えばいい」
「手持ちのG2でもいいのか?」
「いいよ。でも伊達君なら、新しいのを使ってみたくなると思うな」
そうリベルが言ったが、それは正しかった。
武器エリアには確かにマモルの興味を惹かれるものが山程あった。これならアレを倒せる、これがあったらあの時も楽だった、こんなのが開発されたら楽勝じゃないかと思うものだらけで、あっという間に時間が過ぎた。
「いいのは見つかったか? きっちり勝ってくれよ」
背後から声をかけられ、マモルはビクリとした。
黒烏会のボスが、用心棒や他の参謀みたいなのと一緒にいた。銀髪のドクもいる。
「大丈夫です、ご期待ください」
リベルが営業スマイルで言っていて、マモルは浮かれてる場合じゃないと思った。勝ちに行かなくちゃ。
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