11

3/8
前へ
/94ページ
次へ
 *  戦闘ショーはオープリングセレモニーみたいなものだった。  戦闘会場はプールエリアの外、山側にある駐車場みたいなところに作られた大きな仮設アリーナだった。そこからの映像を、プールエリアの展示会メイン会場の大きなスクリーンに流す。観客は安全に楽しく賭けができるというわけだ。  マモルは最初の二人が大型の肉食虫を二体ずつ倒すのを見て、そして二人がどちらも何かの薬剤で興奮し、異様に残虐になっているのを見て、逃げ帰りたいと思った。ボスがくれた薬の意味を理解する。  二人はそれぞれ最初から六十点を獲得し、リベルがちらりとマモルを見た。マモルは小型の三つと中型の一つで、そのままだと三十点が上限だった。既に点差が開くことが確定してしまっている。  三人目の戦士は、中型の虫や蜘蛛を倒し、前の二人と同じぐらいの点数を稼いでいた。 「タイムに賭けるしかないね」  リベルが言い、マモルは彼を睨んだ。軽く言うが、どの虫も毒や鋭い牙などの武器を持ち、人間をこれまでに襲った例がある奴らだ。リベルによると、裏では人間の遺体をエサにして育てて、人を襲う習性にしたものも多いらしく、迷わず人を襲ってくるという厄介なやつらなのだ。  マモルは名を呼ばれ、透明アクリル板で区切られたアリーナに入った。何の遮蔽物もない状態で虫が好きに散らばっている。戦士はそこに金網のボックスに入れられて中央に置かれ、スタートで金網が開くという仕組みだった。武器はボックスに入るなら、どれだけ持ち込んでもいい。  獲物を仕留めると、その規定のポイントが入るが、もう一つの要素にタイムがあった。最初の一分で仕留めた場合は、獲物のポイントの倍、三分以内では1.5倍、そしてそれ以降は通常ポイント。獲物の全滅、人間がやられた場合と、ドクターストップ以外に終了はない。  そしてドクターストップをかけるのは、どうやら興行主の関係者で、盛り上がり度合いによって決めるような雰囲気が見て取れた。期待できる判断はなさそうだとマモルは思った。  盛り上げ役のDJみたいなのが「期待の新人です」とマモルを紹介し、カウントダウンが三つあって、ガチャンと金網が開いた。  音に驚いたオオコガネバチが興奮してブンという羽音を鳴らして飛んでくる。同時に背後からカサカサと小型の、といっても五十センチ程度のムカデが近づく。あと二つは壁に張り付いていた小型のカエル。長い舌で獲物を巻き取る奴だ。舌の先には毒の粘液がついている。  マモルは自分から近づいてくるハチをまず撃ち、そして振り返ってムカデの頭部、腹部、そして残った下腹部を三発続けて撃つ。ムカデは三つ連なった団子みたいな虫玉になる。  そして右のカエルが伸ばしてきた舌から、体を倒しながら逃れた。もう一方の左のは、マモルが右のを両生類用の銃で撃っている腕に舌を巻き付けてくる。腕がぐいと引っ張られ、マモルは体が浮きそうになるのを感じた。腕には耐毒のアームガードをつけているが、そのままカエルの口に吸い込まれそうになって、マモルは左手の小型銃でカエルの頭を吹っ飛ばした。  粘液がフェイスガードにべチャリとつき、マモルはすぐにそれを腕で拭った。  アリーナを見る。  動いている個体はない。両生類がつぶれた弾力のある死体と、団子みたいな茶色く光る虫玉、それとハチの縞模様が美しい玉が転がっている。 「三十二秒。驚異のタイムが出ました」  DJが興奮して言い、マモルは腕についた粘液を、顔をしかめて振り払った。  少し離れたプール側で、小さなどよめきと拍手が上がるのが聞こえた。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加