12

1/4
前へ
/94ページ
次へ

12

 小突かれて目を覚ますと、リベルが立っていた。そして夜だった。 「あんな立派なベッドがあるのに、なんでソファーで寝てるの」  リベルは呆れるように言い、マモルはゆっくり体を起こした。休んだはずなのに、体のきしみは酷くなっているように思えた。 「外で花火やるよ。カクテルパーティもある。君がしたがってた名刺交換や情報収集ができる」  リベルはそう言いながらテーブルの皿からイチゴを取って口に入れた。 「うまいよ。腹も減ってんじゃないの?」  マモルはそう言われて空腹に気づいた。手を伸ばしてピックのついたカットフルーツを食べる。確かにパイナップルもメロンも、何かよくわからないフルーツもうまかった。  リベルは気の抜けた甘いシャンパンを口にして顔をしかめた。 「クローゼットに贈り物の服も入ってるから、シャワーでも浴びてきたら?」  そう言われて、マモルは腰を上げた。クローゼットにはシャツとスーツが掛かっていた。他には展示会場にもあった軽量防虫服や、作業服もある。  さすがに下着はないかと思ったら、虫柄のトランクス三枚セットがあり、マモルは苦笑いした。  髪を洗い、汗と汚れを流すとさっぱりした。 「で、作業服なんだ?」  リベルが笑い、マモルはブルーグレーのつなぎの腕をまくった。 「スーツが似合うわけないだろ?」  マモルが言うと、リベルはそうかなぁと肩をすくめた。 「ここ、会期中いてもいいって話だけどどうする? 優勝したから食事も酒も無料だって。いいよね。僕はお金を払わないといけないのに」 「用が終わったら帰る」  マモルは鏡を見ながら、耳の上の傷を調べた。自分の救急キットのテープで小さく留めておく。よく見ると顔にも手にも細かい傷がたくさんあった。 「代わりに僕が泊まってもいい?」  リベルはベッドに座ってクッションを確かめるように飛び跳ねる。 「ホテルがいいって言うならな」 「いいって言ってたよ。鍵もくれたし」 「セキュリティがザルだな」 「まぁね、伊達君の恋人だって言ったらOKだったよ」  マモルはリベルを見た。が、文句を言うのはやめた。 「パーティに行く」  マモルが言うと、リベルはジャンプして立ち上がった。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加