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12
小突かれて目を覚ますと、リベルが立っていた。そして夜だった。
「あんな立派なベッドがあるのに、なんでソファーで寝てるの」
リベルは呆れるように言い、マモルはゆっくり体を起こした。休んだはずなのに、体のきしみは酷くなっているように思えた。
「外で花火やるよ。カクテルパーティもある。君がしたがってた名刺交換や情報収集ができる」
リベルはそう言いながらテーブルの皿からイチゴを取って口に入れた。
「うまいよ。腹も減ってんじゃないの?」
マモルはそう言われて空腹に気づいた。手を伸ばしてピックのついたカットフルーツを食べる。確かにパイナップルもメロンも、何かよくわからないフルーツもうまかった。
リベルは気の抜けた甘いシャンパンを口にして顔をしかめた。
「クローゼットに贈り物の服も入ってるから、シャワーでも浴びてきたら?」
そう言われて、マモルは腰を上げた。クローゼットにはシャツとスーツが掛かっていた。他には展示会場にもあった軽量防虫服や、作業服もある。
さすがに下着はないかと思ったら、虫柄のトランクス三枚セットがあり、マモルは苦笑いした。
髪を洗い、汗と汚れを流すとさっぱりした。
「で、作業服なんだ?」
リベルが笑い、マモルはブルーグレーのつなぎの腕をまくった。
「スーツが似合うわけないだろ?」
マモルが言うと、リベルはそうかなぁと肩をすくめた。
「ここ、会期中いてもいいって話だけどどうする? 優勝したから食事も酒も無料だって。いいよね。僕はお金を払わないといけないのに」
「用が終わったら帰る」
マモルは鏡を見ながら、耳の上の傷を調べた。自分の救急キットのテープで小さく留めておく。よく見ると顔にも手にも細かい傷がたくさんあった。
「代わりに僕が泊まってもいい?」
リベルはベッドに座ってクッションを確かめるように飛び跳ねる。
「ホテルがいいって言うならな」
「いいって言ってたよ。鍵もくれたし」
「セキュリティがザルだな」
「まぁね、伊達君の恋人だって言ったらOKだったよ」
マモルはリベルを見た。が、文句を言うのはやめた。
「パーティに行く」
マモルが言うと、リベルはジャンプして立ち上がった。
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