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黒烏会は早速腕を奮った。
島の二箇所の港はまず封鎖し、ヘリ着き場ももちろん閉鎖させた。
黒烏会としては八人で来ていたようだが、夏木の用意していた警備スタッフやホテルの何人かの腕っぷしの強いのにも命じて手腕を振るったようだ。
動画では場所は説明されていなかったから、まだ司法の手は入ってこないはずだったが、既に展示会の出店者たちは早く脱出したくてクレームを上げていた。
マモルはそこでも呼び出された。人は撃たなくていいが、撃つフリならできるだろう、とのことで、黒烏会のボスに警備を命じられた。
誰よりも早く逃げ出そうとして南の港で捕まった関係者たちが詰め込まれたクルーザーの上に立たされ、人も殺せる大型銃を持たされた。
「一人でも逃したら、おまえを虫玉にするぞ」
黒烏会の用心棒ナベはマモルに引き継ぐときに、そう言った。
やってみろ。薬剤の違いも知らないクセに。
マモルはそう思ったが、口には出さなかった。
そして黙って銃を持っているだけで、戦闘ショーで優勝したのを見ていた関係者はビビりまくってくれた。誰かを脅す必要も、威嚇する必要もなく、甲板に立っているだけで良かった。二十人弱の人たちが、甲板の端に座らされている。
楽な仕事だったが、JIPAのことは気になった。動画流出の経緯もわからない。若いのが功を焦って出してしまったのか、それとも恋人か何かにだけ見せたつもりが流出したのか、あるいは何かでハッキングされたのか。
何でもいいが、その撮影者たちが今この島に残っていないことだけを願った。
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