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しばらくして身体検査を済ませたVIPから島を出るというのが決まり、マモルが見晴らされているクルーザーの非VIPたちはまだまだ待たされることになった。マモルは炎天下に置き去りにされた小心者たちと一緒に小一時間を過ごし、熱中症になるんじゃないかと思った。
「ちゃんと見張ってるだろうな」
様子を伺うためにかけてきた電話口でナベは偉そうに言った。マモルは、俺はおまえの部下じゃないがと思いながら「見張ってる」と答えた。
「着の身着のままで来た人が多いから、水分がほしい。下手をしたら脱水で倒れる人が出る。あと日除けに使えるものも用意してほしい。展示会場で使ってたパラソルとかあるだろ」
「偉そうに言うんじゃねぇ。おまえは黙って立ってりゃいいんだ」
「俺も倒れそうなんだけど」
「倒れたらぶっ殺すぞ」
マモルは黙って息をついた。
「ボスと話したい」
「うるせぇ、俺が任されてる。おまえが話す相手は俺だ」
「俺はあんたに雇われてるわけじゃない」
「黙れ。俺が任されてると言っただろ」
「ここには年配の人や、体力のない女性もいる」
「これ以上ごちゃごちゃ言うと、マジで殺すぞ!」
マモルは眉を寄せた。ボスもよくこんなのを用心棒にしてるなと思う。
「わかった。じゃぁ俺は今からここを放棄して、あんたのとこに行く。そんで、この銃であんたを玉にする。それが嫌なら五分以内に冷えた水と傘を持ってこい。わかったな」
マモルはそう言って電話を切った。
甲板でその会話を聞いていたゲストや売買業者たちが、一瞬シンとした後に笑い始め、拍手も広がった。
「いいぞ、さすが戦士」
「その玉、俺が買う」
マモルはその声を聞きながら、携帯のアラームを五分にセットした。
俺は本気だ。
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