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リネン室の奥に隠れていた怪しい男が見つかったと聞いて、マモルはラウンジに急いだ。ラウンジは奥が臨時の尋問室になっていた。
「JIPAみたいだよ」
リベルが暇そうに教えてくれ、マモルは奥に入った。
羽田ではなく、もっと若い男が殴られた顔を腫らして泣きじゃくっていた。黒烏会の怖い顔の構成員が怒鳴っている。そのたびに男は怯えてわめいた。
「ボスたちは?」
マモルが聞くと、リベルは外を指差した。
「帰る準備をしてるよ。僕らもボスと一緒に高速艇で帰るって話になってる」
「残ってる人たちは?」
「うまく行けば濡れ衣…じゃないけど、罪をかぶってもらう感じ? どうせ一般の参加者は主催者のことなんて知らないし」
「警察は場所を突き止めたのか?」
「時間の問題だよね」
マモルは奥の尋問室を見た。気の毒な泣き声が聞こえている。まだ若い。自分と同年代にも見える。機動力で連れてきたんだろうか。
「おい、暇なら手当り次第探せ。クソスパイは、あと二人いるらしい」
黒烏会の強面が言い、マモルはうなずいた。
「投降を呼びかけよう。手荒いことはしないと言ったら出てくるだろう」
「そんな素直な奴らか?」
「じゃぁ出てこなかったら、あいつを殺すと脅す」
「おまえ、極端だな」
黒烏会の構成員はそう言いながらも、その案が気に入ったらしく、ホテルの従業員に放送させろと偉そうに言っていた。
とりあえず三人をまとめる。JIPAには恨みがあるとでも言えば、マモルに処分を任せてくれるかもしれなかった。
携帯電話が震え、マモルは通知を見た。
『撤退しろ』
ケイからだとマモルは思った。
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