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昨日は軽快な音楽が流れていた放送網から、JIPAのあと二人に対して脅迫を込めた呼びかけが行われた。
が、ほぼ同時にとんでもないことも発覚していた。
戦闘ショー用に準備していた獲物のうち、ショーで使われなかった虫を入れていた檻やケースが解放されているということだった。もしかしたら残りの二人のJIPAの仕業かもしれないという。マモルもそれは考えた。羽田ならそんなこともしかねない。彼は腕のいい駆除士だ。虫の性質も危険生物の処理もわかっている。もしもう一人と一緒にいるのなら、JIPAの二人は無事でいるだろう。
問題は他の業者やホテルスタッフだった。既に他の戦士たちは島を追い出されていて、元駆除士の業者たちは虫退治より早く島を出たがっていた。
マモルはリベルにリストを出してもらい、残っていた個体を調べた。
「ロビーにハチが襲撃して大変だったみたいだよ。ポンコツの見張りが乱射したり、逃げてプールに落ちる人とか。もう大騒ぎ」
リベルは監視カメラをラウンジのPCで眺めて、ケラケラと笑っていた。
「どこに何がいるかわかったら誘導しろよ。港に向かったらどうするんだ。VIPも下っ端も関係なくやられるぞ」
マモルはリベルに言い、リベルは面倒そうに唇を突き出した。
「夏木ちゃんがやられたら万々歳じゃん。君もそう思うだろ?」
「放送で誰も外に出るなって警告してくれ」
「あと一時間ぐらいで警察が来るっぽいのに? 誰も言うこと聞かないよ」
「予備の大型が一体、中型が…六?七? あとは小型と群れが残ってる。しかも人間を襲うように仕組まれてるんだぞ」
「ねぇ、戦闘ショーなんて悪趣味なこと考えるから、こんな目に遭う」
リベルは他人事のように頬杖をついて言った。
マモルは落ち着き払って楽しんでいる彼をじっと見る。
「檻の鍵はオンラインで管理してるよな。あんたが解除したんじゃないだろうな。ここでずっと引きこもりながら」
「何言ってるの。僕はハッカーじゃないんだよ」
リベルは楽しそうに笑う。
「んで、あんたがJIPAの動画を流したとかじゃないよな?」
「酷いこと言うねぇ。恋人設定なのに」
「夏木さんはどこに?」
「さぁ、どこだろう。さっき、君がプールの方にいたから、探しに行ったかもね。一緒にヘリに乗せてあげるとか言ってたから」
「今、映ってるか?」
マモルはいくつもあるカメラ画面を見た。
「うーん、いないね。もうヘリポートに向かったかもね」
「リネン室の奴を見つけたのも、あんたか?」
「褒めてくれるの?」
「黒烏会のボスは?」
「ボスは生かしておきたいから無事だよ」
リベルがウインクし、マモルは夏木の後にリベルが市場を乗っ取ったら、そっちの方がややこしくなるに違いないと思った。
「俺も生かしておきたいだろ。誘導しろ」
マモルが言うと、リベルは肩をすくめ、仕方ないなぁと笑った。
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