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 その後は、マモルも羽田も、駆除士らしく立ち回った。  というのも、初めにやってきたのが警官で、虫についてはほぼ素人だったからだ。ICCは何をしてるんだと聞いたら、犯罪組織相手だから警察だと思ったとか言っていた。それは警察がなわばりを主張したのか、ICCが腰砕けだったのかわからない。が、どちらにせよ、虫に対する準備はまったくできていなかった。  だからマモルも羽田も一旦逮捕されたにも関わらず、警官を率いて駆除をすることになってしまった。  疲れ切っていたマモルは、ボスにもらった錠剤を飲んだ。それにどんな効果があるのかわからなかったが、とりあえず視界はしばらくクリアになった。蜘蛛退治ぐらいの体力は絞り出せる気がした。  展示会場には荒らされた荷物がたくさん残っており、そこからマモルと羽田は銃や薬剤を手に入れた。証拠物品だと警察が渋ったが、港の蜘蛛の巣を見て彼らも諦めた。  蜘蛛はかなり厄介だった。一匹が土蜘蛛で、地面にもトラップがあり、マモルも羽田もそれで一度は死にかけた。逮捕なのか保護なのかわからない状態で、ホテルに戻される人々の中から、自分も元駆除士だから手伝うと数人が来てくれ、それで何とかなったとも言える。  ほとんど落ち着いた頃にICCの船が着いた。  派遣された駆除士は虫の駆除がほぼ終わった島で、虫害に遭った人たちの応急手当や、残された毒毛や体液の処理を行った。  マモルと羽田も蜘蛛の糸に触れたり、毒毛に多少触れたりしていたので、二人もICCの診察を受けた。当然ながらマモルは羽田よりもダメージが大きく、すぐにストレッチャーに乗せられ、救急艇へと運ばれた。その途中でダイトとすれ違ったので、マモルは付き添いの警官に制止されながらも呼び止めた。  ダイトはマモルを見て眉を寄せた。 「おまえ、何やってんのかわかってんだろうな!」  激昂したダイトが顔を真赤にしてマモルに掴みかかろうとし、警官が間に入った。 「島の西側の丘にテングアリがいる。注意は伝えたけど、徹底してほしい。あと、これまでに被害が出てないか調べた方がいい」  マモルは言いたいことだけをダイトに言った。 「おまえに指示される筋合いはない」  ダイトが言い、マモルはそれもそうだとうなずいた。頭は朦朧としていたし、誰か信頼できる奴に伝えたかっただけだった。  マモルはストレッチャーで運ばれながら、ダイトが多くの駆除士にテキパキと指示を出している背中を見た。もう安心だった。思い残すこともない。  そう思うと気が抜けて、体の痛みが急に激しくなった。  体が痙攣しかけたのは、浅く意識に残った。
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