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 *  そういうことが気になってよく眠れなかったという話をすると、ケイはマモルをちらりと冷たい目で見て、そして自分で持ってきた見舞いのケーキをむしゃむしゃと食った。マモルにはモンブラン、自分にはガトーショコラだった。 「おまえも暇になったもんだな」  ケイが言い、マモルは眉を寄せた。暇じゃない。 「だから、昨日は勢い余って失礼なことをして悪かったって思ってる」 「ああ、私は別に気にしてない。念願の号泣を見られたし」 「まぁな」  マモルは認めた。あれは号泣だ。 「苦しかったんだ。なんかここに、真っ黒の塊がひっかかってて」  マモルはそう言って自分の胸の辺りを指差した。  ケイはそれをちらりと見る。 「もうなくなったのか?」 「ん…そうだな、塊はないな。まだ気持ち悪い感じはあるけど」 「私に鼻水をつけたかいがあったな」 「だから、悪かったって。ごめん」 「おまえ、大事なことを忘れてるだろ」  ケイが言い、マモルは目を丸くした。 「え、何だっけ? 俺、何か約束した? 金?」  ふっとケイが笑う。怖い。 「モンブラン、いらないならもらおうか?」 「いや、食べる。大事なことって?」 「忘れてるなら、おまえにとって大事なことじゃなかったんだろう。私だけが覚えておく」 「はぁ? そんなのずるいだろ。ヒントをくれ」 「元気そうだな。おまえがいない間に、かなりおまえ指名の案件が溜まってるんだ。それを処理したいから早く退院しろ」 「それが関係あるのか? 違うよな。ヒントをくれよ。指名案件は頑張るから」 「いや、いいんだ。私の心がちょっぴり傷つくだけだ」 「え」  マモルは顔面蒼白になる。 「おまえを傷つけること? 何だ? 誕生日はまだ先だろ?」 「気にするな」  ケイは笑みを浮かべてケーキの残骸をゴミ箱に捨てた。  マモルが、今日はそれが気になって眠れないかもしれないと言ったら、ケイは「良かったな」と答えた。
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