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15
カナは緊張して周囲を見た。狭い通路に人がいっぱいいる。それもちょっと粗雑で汚れた感じの人たち。最新のファッションビルのすぐ裏なのに、こんなに灰色と茶色に染まった世界があるなんて。でもよく見ると、あまりにも多い色が混じり合って灰色になっていることに気づく。ここは沈んだ暗い街ではない。とっても活気に溢れた場所だった。
迷路みたいな路地を、カナは人に当たらないように歩く。それでも肩や足が行き交う人に当たってしまう。
脇では呼び子が店に客を誘っている。小さなチケットを配って、ラーメン一杯食べたらもう一杯みたいなセールス文句を言っているのもいる。
大きな笑い声や、誰かの怒号、キャッチセールス、酔っぱらいの歌が入り交じる。食器がガチャンと割れる音もする。
そんな雑多な通りの端で、憧れの上級駆除士が人待ち顔で立っている。
「伊達さん!」
カナはホッとして駆け寄った。
「あれ? ケイと一緒?」
マモルはカナの後ろを見た。
「いえ…叔母さんがこの店で待ち合わせって。伊達さんも一緒だとは聞いてませんでした! でも嬉しいです」
カナはメモを見せた。それを見てマモルは眉を寄せた。そしてカナを見る。
「…江東が内偵?」
カナは驚いてマモルを見た。
「え…あ、はい」
そう答えると、マモルは破顔した。
「コオロギ、食える?」
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