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我家には主(ぬし)がいる。
主とはいえ、頻繁に外に出ては家を空ける。
僕が家を出た帰り道、我家が見える頃になると、その主は僕の姿を見つけては決まって家まで僕を誘う。
その白く細い手。注意深くしゃなりしゃなり歩く様。時折振り返って首を傾げ僕を凝視する様は愛らしく、僕は胸が熱くなる。
主が主であるが所以、僕の心を掴んで離さず僕をひれふさせる主はさながら僕にとっては姫と呼ぶに相応しい。
我家はそれでは城であろうか、姫は優雅な身のこなしでカタンと扉を開けて城へ僕を招き入れる。
僕はぼうっとなって扉を開けて我が城へと足を踏み入れている。
その辺の記憶がいつも曖昧だ。
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