3章

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僕は何も言えなかった。だって、アルよりも弱いから、人間族の中でも無能だったから。どっちも凄くて敵いそうになかったから。 やっぱり僕じゃ何もできないんじゃ…。クルス…。 やめやめ!前向きに考えてこう!そうしないと後悔しそう…。 「で、あれはどういう理屈なんだ?」 「それはな、俺には弱点が見える。」 「弱点?」 「弱点ていうか、粉砕点だな。それはどんなものにもある。岩にも、草にも、生き物にも。それがわかるから、一発で粉砕できる。それが見えるのは一握り。だから、俺が獣王候補になったんだ。これがなけりゃ獣王候補になんてならなかっただろうな。」 「何で?」 「“狐”だからか。」 何で狐だから獣王候補にならないの? 「そうだぜ。」 「アル、ダイ。何で狐だとなれないの?」 「そうか、レイは知らないのか。」 「キツネは獣人族の中では嫌われものさ。なんてったって嘘つきだからな。だから今まで一度の狐の獣王候補はいなかったんだ。俺が初めてだな。」 「ダイは違うだろ。偏見か?」 「そう偏見だな。でも今まではそれでよかったんだけど、俺が獣王候補に選ばれて少し変わった。もし俺が獣王になった俺に従わなければいけない。それが嫌だったんだろう。今回の獣王候補はたくさんいる。いつもは2,3人くらいなのに。今回は15人。倍以上だ。」 「そんなに…。」 「俺は獣王なんてもんなりたかねぇがな。」 「なら何で獣王候補となったままなの?候補から降りれるでしょ?」 「これでも俺は候補者の中で一番力があるからな。それに、候補を降りるなら今代獣王サマにお会いしなくちゃいけねぇ。それが難しいんだよ。」 「獣王候補だろ。会えに行けないのか?」 アルは、眉間にしわを寄せながら言った。 「無理だね。獅子じゃないからな。」 「他に方法がないの?」 「あるちゃあるが…。」 どうしたんだろう?考え込んでる。 「武闘会で優勝したら会えるもな。」 「舞踏会?ダンスでも競うのか?」 「違う違う。武闘の戦い。」 「つまり殴り合いだな。」 「そういうこと。」 「じゃあ、勝てばいいじゃん。勝てるだけの強さがあるんだろ。」 「無理だ。武闘会は、殺し合いじゃない。俺の技は、ものに試すや、殺し合いだったら有利なんだが、武闘会では禁止されてる。」 「そんな…。」 じゃあ、どうすればいいんだよ。自由になりたい奴が自由じゃないなんておかしい。でも…。 「アル、…アルが居る!」 「?」「はあ!?」 「アルだったら、その武闘会ってのも優勝できるんじゃ…!」 それを聞いた2人の反応は少し傷ついた。 アルは、呆れた顔してるし、ダイは、何言ってんだこいつって感じの顔してるし。 いい案だと思ったんだけどな。 そう思ってたら、ダイが何か考え始めた。 考えがまとまったようで顔を上げていた。悪だくみをしてるような顔だった。 「嫌、それでいこう。ついでに、レイも出てもらう。」
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