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僕は何も言えなかった。だって、アルよりも弱いから、人間族の中でも無能だったから。どっちも凄くて敵いそうになかったから。
やっぱり僕じゃ何もできないんじゃ…。クルス…。
やめやめ!前向きに考えてこう!そうしないと後悔しそう…。
「で、あれはどういう理屈なんだ?」
「それはな、俺には弱点が見える。」
「弱点?」
「弱点ていうか、粉砕点だな。それはどんなものにもある。岩にも、草にも、生き物にも。それがわかるから、一発で粉砕できる。それが見えるのは一握り。だから、俺が獣王候補になったんだ。これがなけりゃ獣王候補になんてならなかっただろうな。」
「何で?」
「“狐”だからか。」
何で狐だから獣王候補にならないの?
「そうだぜ。」
「アル、ダイ。何で狐だとなれないの?」
「そうか、レイは知らないのか。」
「キツネは獣人族の中では嫌われものさ。なんてったって嘘つきだからな。だから今まで一度の狐の獣王候補はいなかったんだ。俺が初めてだな。」
「ダイは違うだろ。偏見か?」
「そう偏見だな。でも今まではそれでよかったんだけど、俺が獣王候補に選ばれて少し変わった。もし俺が獣王になった俺に従わなければいけない。それが嫌だったんだろう。今回の獣王候補はたくさんいる。いつもは2,3人くらいなのに。今回は15人。倍以上だ。」
「そんなに…。」
「俺は獣王なんてもんなりたかねぇがな。」
「なら何で獣王候補となったままなの?候補から降りれるでしょ?」
「これでも俺は候補者の中で一番力があるからな。それに、候補を降りるなら今代獣王サマにお会いしなくちゃいけねぇ。それが難しいんだよ。」
「獣王候補だろ。会えに行けないのか?」
アルは、眉間にしわを寄せながら言った。
「無理だね。獅子じゃないからな。」
「他に方法がないの?」
「あるちゃあるが…。」
どうしたんだろう?考え込んでる。
「武闘会で優勝したら会えるもな。」
「舞踏会?ダンスでも競うのか?」
「違う違う。武闘の戦い。」
「つまり殴り合いだな。」
「そういうこと。」
「じゃあ、勝てばいいじゃん。勝てるだけの強さがあるんだろ。」
「無理だ。武闘会は、殺し合いじゃない。俺の技は、ものに試すや、殺し合いだったら有利なんだが、武闘会では禁止されてる。」
「そんな…。」
じゃあ、どうすればいいんだよ。自由になりたい奴が自由じゃないなんておかしい。でも…。
「アル、…アルが居る!」
「?」「はあ!?」
「アルだったら、その武闘会ってのも優勝できるんじゃ…!」
それを聞いた2人の反応は少し傷ついた。
アルは、呆れた顔してるし、ダイは、何言ってんだこいつって感じの顔してるし。
いい案だと思ったんだけどな。
そう思ってたら、ダイが何か考え始めた。
考えがまとまったようで顔を上げていた。悪だくみをしてるような顔だった。
「嫌、それでいこう。ついでに、レイも出てもらう。」
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