1章

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【君にはその才能がある。あいつを殺せる力を与えられる。】 本、当に? 「本当にクルスの仇がが討てるのか?」 才能なんて信用できない。けど本当にこいつを殺すことができるなら。 こいつだけは許せない。こいつだけは… 【もちろん。君にその気があるのなら。】 「どんな対価も払ってやるだから、だから力を貸して!」 【対価はないよ。ただ私の名前を呼んで。レイ・ミルフレッド。私の名前はもうわかるはずだよ。】 「…エアリエル。」 うわっ。風が強い。 な、女の人? 風が吹き止んだとたんに現れたのは小さい女の人だった。 【あなたの願いは、敵討ちでいいの?】 レイはすぐには答えられなかった。驚きすぎて固まったのである。 1拍おいて我に返ったレイは、 「そうだよ。僕の願いはそれだけ。」 【そう。わかった。】 そう言った女の人はキングゴブリンと向き合って、手を振り上げた。 そうすると風の刃がキングゴブリンの首を切った。 キングゴブリンは倒れた。 「き、君は?」 【私は、風の精霊。】 「精霊?ならクルスを生き返らせて。お願い。」 精霊ならできるでしょ? 【死んだ人を生き返らせられない。たとえ精霊女王でもできない。】 「そんな…」 あれ? 「力が入らない。」 【まだ、だったみたい。あなたがもっと力をつけたらまた詠んで。じゃあね。】 「待って!」 行っちゃった。 聞きたいことあったのに。僕の才能って? でも、ここから出よう、クルス。キレイな野原に埋めるからもう少し待って。 レイは、クルスを背負って洞窟を出てきた。背中から伝わってきた冷たさがクルスが死んだことが自覚させる。それが悲しくさせた。 レイは、町へ戻らなかった。クルスを背負ったまま野原を探した。 そしてレイは見つけた。広くきれいな野原を。とても懐かしい感じのする野原を。そこには緩い丘があった。その頂上に埋めることにした。 一緒に木の実を植えた。場所を忘れることの無い様に。荒らされることの無い様に。自分の戒めを忘れることの無い様に。クルスがちゃんと眠れるように。 クルスを埋めてからレイは、そこから動かなかった。 「クルス。僕どうすればいい?クルス、こういう時こそ僕を引っ張ってよ。何で死んじゃったの?僕なんかをかばうなよ。知ってるんだからな、学園でのお前の席はまだ空いてるんだって。俺は退学だけど、お前は帰るとこがあるんだから、かばうなよ。」 そこからは、静かに泣いていた。ずっと一緒にいたのに急に分かれたから心の整理がついていないのだ。 少しすればレイは、前を向いて涙を拭いて、 「クルス。僕、行くよ。」 決意を報告していた。 「クルスが“がんばれ”って言ってくれたから頑張る。5種族が仲良く暮らせるよう頑張ってみる。だから、もう来れないかもしれない。でも、さよならじゃない。またね。僕が死んだら色々話すね。後悔しないように生きるね。」 そう言って、立ち去って言った。 《頑張って。レイならできるよ。》 何か聞こえたような気がして振り返ったが何もいなかった。 レイは、笑みを浮かべながら去っていった。 1人旅の始まりだ。
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