雨上がりのバス停

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 俺はさ、失敗ばかり繰り返して、それでもそれを直すことが出来ないでいる。いつも後になってああすればよかった、こうすればよかった、と思うんだ。で、そうやって自分を振り返って、次は間違えないようにしようと思っていたのに、結局大事なときには反省したことを忘れて、また同じ失敗を重ねる。  話下手なのもわかってる。相手の気持ちがうまく汲み取れないのもわかってる。だけど、どうしても皆と仲良くなりたくて、頑張って話しかけてみる。ちょっとクラスの人と話して、相手が笑っただけで、自分は好かれているのかもしれない。皆の話の輪に入れるような存在になれるかもしれない、と思うんだ。  でも、ちょっとすると感じ始める。皆自分のことを避けているような気がしてくるんだ。話がつまらなくて、失敗ばかり繰り返す空気が読めない奴だ、って。迷惑がられているように感じてくる。そう感じ始めると、周りの人に話しかけるのが怖くなる。自分が話しかけることで、相手に余計嫌われるんじゃないかって。その結果、自分から話しかけないから、会話する相手も減っていく。そうなってくると、皆が自分に向ける笑顔も愛想笑いに見え始めて、自分のことを大切な存在だと感じてくれている人はいないんじゃないかと思い始める。  実際、いないのかもしれない。一部の人が人気で、俺みたいな一人で悩んでくよくよしてるような人間には、社交辞令としての会話や笑顔だけが向けられて、実際は生きていく上での作業としてのコミュニケーションだけが取られているんじゃないかと思う。  俺は俺が嫌いだ。自分自身までが嫌っているような人間が、他の人に好かれるわけがないのかもしれない。 「僕も自分勝手な話を疲労したことだし、これでおあいこだね」  郁也は力なく微笑んで、自分の手に視線を落とした。
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