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「ほら、あれ」
男の子が指さす先には、岩の影で身を休める、小さな川魚の姿があった。
「へえー、あんなところに」
間近で魚が泳いでいるのを見たことがなかった田辺くんは、声を潜めながら感動した。
「これで、捕まえてみるか?」
ひそひそと、男の子が虫取り網を差し出してくる。
「いいの?」
「ああ。逃がすなよ」
気前よく頷いて、男の子が虫取り網を貸してくれる。受け取った田辺くんは慎重に近づいて、網を水の中に突っ込んだ。
しかし、虫取り用の網は川の流れの中では上手く動かず、危険を察知した魚に逃げられてしまった。
「あーあ」
「はは、しょうがないなあ。次は俺だ」
男の子は残念がる田辺くんから網を受け取り、そろりそろりと別の岩場に移動した。そして魚の影を見つけると、
「やあっ」
勢いよく網を突っ込む。しかし、網の中に残っていたのは細かいゴミばかり。
「だめじゃん」
「いやあ、やっぱ難しいな」
そう笑い合い、二人は何度も魚を捕まえようとしたが、なかなか捕まえられなかった。
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