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どれだけ時間が経っただろうか。水の中、特に流れのある川の中で遊んでいると、かなり体力を消耗してしまう。へとへとになった田辺くんが、そろそろ出ようと言いかけたとき、
「こらっ、何やってるんだ!」
遠くから、野太い怒鳴り声が聞こえた。びくっとして振り返ると、土手の上から知らないおじさんが睨んでいるのが見えた。
「見ろ、夕立がくるぞ!早く川を出るんだ!」
えっ。驚いて西の空を見上げる。分厚い灰色の入道雲が、ゴロゴロと音を立てながら空を覆い尽くそうとばかりに膨らんでいる。気づけばあたりは薄暗くなっており、あんなに騒いでいた子どもたちはいなくなっており、川には田辺くんと男の子の二人だけしか残っていなかった。
いつの間に、と戸惑っているうちに、おじさんが急いで川岸まで下りてくる。
「ほら、早く!」
手招きするのに従って川を出ようと歩き始めたとき、ガシ、と肩を掴まれた。
「いいじゃん。まだ大丈夫だよ」
男の子の声。さっきまで聞いていたのと同じ声だが、田辺くんはどこかに違和感を感じた。肩を掴む力が、同じ小学生とは思えないほど強いのだ。
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