川で遊んでいたら

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 大学で知り合った田辺くんという男の子が、まだ小学二年生だった頃の話。  田辺くんが通っていた学校の裏手には綺麗な川があって、深さもそれほどないので、学校帰りや夏休みなどに、友だちとよく遊びに行っていた。  ただ、親や先生から口酸っぱく言われていた決まり事があった。 「夕立が降りそうなときは、すぐに川から離れること」  川に行くときや、夏休みに入る前の終業式など、耳にタコができそうなほど、いろいろな場面で何度も何度も言われていた。  あまりにも大人たちがしつこく言うものだから、あるとき田辺くんは担任の先生に理由を聞いてみた。すると先生は、黒板にイラストを描きながら丁寧に説明してくれた。  曰く、その川は上流の方にダムがあり、激しい雨が降ったりすると余分な水を放流することがあるという。すると川の水かさが急激に増して、川岸にいると非常に危険なのだとか。ただでさえ、川というのは雨が降ると水かさが増える。そういった危険から守るために、大人たちはそういう決まり事をつくったのだ。  そう、先生は説明してくれた。  田辺くんもそれを聞いて納得し、それからはどんなに川遊びに夢中になっても、西の空に入道雲を見つけると、言いつけ通りに川から離れることにしていたという。
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