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「良幸。いくらなんでも酒臭い新郎なんかじゃ結婚前から愛想尽かされるぞ。それに明日は5時起きなんだろ?もう寝ろ」
俺は何気なさを装いながら酒瓶を片付ける。
「ヤダ~。俺はまだ飲むんだぁ」
「良幸」
「お袋みてぇな事言うなよ。結婚できねぇぞ~ハハハ」
「別に構わねーよ。良いから寝ろ。風呂沸かしてくるから酒片付けとけよ。」
「ヤダ~」
「良幸っ」
滅多に見ない泥酔姿の良幸に戸惑う。
「飲み過ぎだぞ。明日本当にやばいんじゃないか」
「良いもん式なんて出なくて~。琢磨だって式出んの嫌だろ?」
「なに言って…」
「だってさ、式に呼んだ時も、俺が結婚するっった時も、お前すげー嫌そうだったじゃん」
思わず息をのむ。
「俺、お前におめでとうって言われてない」
悲しそうに良幸が言う。
「なんで祝ってくんねーの?」
琢磨。と、涙目の良幸がこっちを向いた。
「…あれ?俺まだ言ってなかったっけ?」
間抜けな声を出して俺は良幸に近づく。
「そりゃ不安だったろうな。悪かったよ。なんかもう言った気になってた。つか早く言えよな」
「だってさ…」
「ま、こりゃ俺が全面的に悪いな。」
言いながら良幸の肩に顔をうずめる。もう顔を取り繕うのは限界だった。
「おめでとう良幸。俺マジで嬉しいよ。」
「琢磨…」
「でも、ちょっと寂しかったのはあるかな。なんかさ、一歩先に行った気がして…俺達ずっと一緒だったのになぁ~なんて。それに、結婚したら疎遠になるって言うしさ」
「バカ琢磨。んなわけねぇだろ!俺達今までずっと一緒だろ。これからも一緒に決まってんじゃん」
鼻をすすりながら言う良幸の声を聞いて、俺も久しぶりに泣いた。
嬉しそうな良幸の声が嬉しくて嬉しくて
これから離れていくであろう2人の関係を思って悲しくて悲しくて
俺は泣いた。
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