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終わり
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「…と、言うわけだ」
「それを僕に話してどうしたいの。」
森也(シンヤ)が胡散臭そうに俺を見る。
「ビックリしたろ?」
「当たり前じゃん。つか何でいきなり良貴(ヨシキ)のお父さんと僕の父さんの恋愛話を聞かされなきゃいけないんだよ」
「冷たい奴だな。身内の事だろ」
「知らないよ。まぁそれは良いとしても…その、…叔父さんはさ、結局僕の父さんに告白したの?」
「いーや、アレでおしまい。お袋と結婚しても、俺が生まれてもずっとお前の親父が好きだったらしいぜ」
「…あそ」
不自然な沈黙に耐えきれず、森也は口を開く。
「それで、さっきの話とどう繋がんの」
「あ?」
「さっき蛙が何とかって言ってなかったっけ」
「あぁ!【蛙の子は蛙】な!まさにその話をしたかったんだよ。俺も親父と同じで、幼なじみのお前が好きだっつーこと!」
「…本気なの?」
「本気なの」
閑散とした部屋の中で、俺の声がやけに響く。
「俺もさ、黙ってるつもりだったんだ。でも親父の話とか聞いたり、今度みたいな事があったらって考えたらさ、どうしてもお前に気持ちを伝えたくなって。」
俺は思わず涙が出そうになって急いで目を閉じる。森也もそんな俺を直視できずに顔を背けた。
俺の親父、琢磨は先月の頭に事故にあって亡くなった。即死だったらしい。たった1人の肉親である俺を残して親父は遠くに行ってしまった。
俺はすぐ隣に住み、親父の親友である良幸叔父さんの家、つまり森也の家に引き取られることになり、四十九日を終えた今、今まで住んでいた家の整理をしていた。
そして、俺と一緒に埃っぽい親父の書斎を一緒に整理している森也に、俺は(蛙の子は蛙なんだよな)と話し掛け、親父の初恋の話をしてやった。
「そんなの…急に言われてもわからないよ。考えた事無い」
なぜか森也の方が泣きそうになってて俺は慌てる。
「ぇえっ!?泣きたいくらい嫌?」
「ち、違うよ!違うけど…やっぱり考えきれない。」
とうとう森也は泣き出した。
「ごめ、ん…」
「だぁっ!泣くなって!」
俺は森也の頭を一生懸命なでて慰める。立場逆じゃね?とは思うが、この泣いてる幼なじみには弱いのだ。
「なぁ聞けよ。そりゃ俺も落ち込むけどさ、お前に伝えられただけでも十分幸せだぜ。親父が一番やりたかった事だろうし、親父より進化してる」
だから
きっと、俺の子供と森也の子供は結ばれるよな。
なんてったって蛙の子は蛙なんだし。
なぁ親父
この狭く小さな部屋で、悲恋の相手を思いながら過ごしていたであろう父に呼びかけた。
end
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