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これが夕立の力かと、私は驚いて感動していた。これならトラのしっぽも本当に元通りになるかもしれない。
「近いぞ」
鳩が緊迫した声で言った。
「夕立はすぐそこだ」
私は必死で走った。
そこは裏通りなのか、通行人も車も極端に少なくて、私と鳩の他には誰もいなかった。
直前まで夕立が降っていたせいもあるかもしれない。
空は雨雲が立ち込めて真っ暗である。
その、昼間だというのに薄暗い空の下の、雨で濡れたアスファルトの道路の真ん中に、小さな影が見えた。
「あれは…」
トラだった。
前足をきれいに揃えて、こちらを向いて、でんと座りこんだその目には、私に対する敵意がらんらんと光っていた。
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