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キジ虎の猫が、のっそりと姿を現した。
「迷い続けることに何の価値もないということが理解できない、憐れな存在なのです」
足と腹が白いサバ虎が、裏のほうからぴょんと跳ね出てきた。
「我々で捕らえて、夕立の下に突き出してやればいい。サバ虎のよしみだとか言って、あやつの愚痴を聞かされるのももう飽き飽きでございます」
この猫達は、トラと知り合いなのだろうか。私はたまらずに、猫と鳩の会話に口を挟んだ。
「トラは何をそんなに迷っているのですか」
猫と鳩は、一瞬顔を見合わせた。
だが、私の質問には答えずに、話しを先に進めた。
「皆さま方、急いで決めたほうがいい。あの者を夕立の下に突き出すのか。捨て置くのか」
「同じ虎模様の被毛を持った同士だ。何とか救ってやりたいと某は思うが…」
「さすれば、あやつを捕らえねばならぬ。一帯にいる猫に協力を求めよう」
キジ虎が、にゃお~んと雄叫びを上げた。それに答えるように、離れたところから複数の猫の声があがった。
あお~ん…
うお~ん…
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